645 JAPAN XVの惨敗が突きつけたもの - 浮かび上がる、日本ラグビーの構造的課題 -


2025年10月18日

オーストラリアA代表に完敗を喫したJAPAN XV。スコア以上に重く響いたのは、フィールドの隅々に見えた「チームとしての成熟度の差」だった。タックル、セットプレー、そして戦術理解。単なる技術の問題ではなく、日本ラグビーが抱える組織構造の歪みが、そのままスコアに現れた試合でもあった印象だ。

■ 一貫性を欠く代表強化の構図
― 「積み上げ」のないJAPAN XVが抱える現実 ―


JAPAN XVは名目上、日本代表の直下に位置する強化チーム。しかし実際の運営を見る限り、その立ち位置は極めて不安定。活動のたびにメンバーは入れ替わり、戦術や方向性もリセットされる。結果として、毎回が「初めまして」の集合体となり、試合ごとに新しい文脈を構築しなければならない。そこに、継続した学習やチームの成熟が生まれる余地は少ない。

一方、オーストラリアAは正代表との戦術共有が徹底されていると向こうの記事で読んで覚えがある。若手がA代表で学んだ構造を、そのまま上位代表で実践できる環境があるらしい。育成と即戦力化を同時に実現する、明快な「通路」が存在するのだ。日本が苦しむのは、この通路の設計図が描かれていないことに他ならない。

■ 不明瞭な強化階層と評価基準
― 選手が「何を目指すのか」が見えない ―


トップ代表、JAPAN XV、U20、そしてリーグワン。それぞれが独立して活動し、共通の哲学や戦術原理を共有していない。ある選手はクラブで「速い展開」を求められ、代表では「接点での粘り」を強調される。つまり、カテゴリーごとにプレーの言語が異なる状態だ。

さらに、選手選考や評価の基準が十分に説明されないため、現場では「なぜあの選手が」「どこを伸ばせば次につながるのか」という疑問が残る。これは単なる不透明さではなく、代表強化という組織の信頼基盤を揺るがす問題だ。選手が長期的に自らをデザインできる環境を作ることこそ、競争力強化の第一歩である。

■ クラブと代表の断絶
― 共通理念のない「すり合わせ」の連続 ―


リーグワンの各クラブは多国籍化が進み、戦術文化も多様化している。その多様性自体は肯定的だが、代表合流時に共通言語がないまま調整に時間を費やしてしまう。本来、JAPAN XVはその翻訳機能を果たす存在であるべきだが、現状では短期間の合宿に終始し、戦術共有よりもコンディション調整が主目的になっている。これでは「即戦力の育成」も「共通理解の形成」も中途半端なままだ。

海外の主要国では、クラブレベルで代表の原理を浸透させる仕組みが整っている。日本に必要なのは、単発的な代表招集ではなく、クラブと代表を貫く一貫したプレーモデルの整備だ。

■ 敗戦が照らしたのは、未来の設計図の欠如
― 世界と戦う組織になるために ―


今回のJAPAN XVの敗戦は、単なるチームの敗北ではない。それは、日本ラグビーの強化システムが短期成果主義に偏っていることを示す警鐘である。真に必要なのは、3〜4年を見据えた強化ロードマップの提示と、JAPAN XVを「代表育成の中核」として明確に再定義することだ。

選手、クラブ、代表をつなぐ一本の線を描き、その中で共通の哲学と評価指標を育てる。その地道な積み上げなくして、「タックルの強度」も「スクラムの圧力」も永続的には高まらない。

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勝敗の原因を技術の差だけで語ってしまえば、構造の問題は永遠に放置されてしまう。日本ラグビーに必要なのは、技術論だけではなく「組織をどう育てるか」という意識改革なのかもしれない。

LENNY'S RUGBY

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