644 赤い薔薇は世界中に咲く
2025年10月13日
W杯が終わって2週間が経ちますが、自分はいまだに試合やハイライトを観返しています。このままだといつまで経ってもW杯にしがんでしまいそうなので、自分の中で一区切りつける意味でも、レッドローズ(イングランド女子代表)の特徴や世界に与える影響をまとめてみました。
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レッドローズがW杯を制した背景には、チームとしての長年の積み上げと、戦術・選手層の両面での強みがあります。主な特徴を整理すると以下のようになると思います。
1. レッドローズの強さの特徴
① 強力なスクラム・セットプレー
・世界でも屈指のスクラム・ラインアウトの安定感。
・FWDのフィジカルと技術が非常に高く、特にモール攻撃からの得点力は代名詞。
・試合を通じて相手を押し込み、得点機会を生むことが多い。
② フルタイム契約によるプロ化
・世界に先駆けて女子選手にフルタイム契約を導入し、専業でラグビーに集中できる環境を整備。
・トレーニング量・フィジカル強化・リカバリーの面で他国よりも一歩先を行っている。
③ 層の厚さと世代交代の成功
・各ポジションに複数の国際級選手を揃え、けがや交代で戦力が落ちにくい。
・アカデミーや国内リーグ(PWR = Premiership Women’s Rugby)から継続的に有望選手が代表に供給されている。
・ベテランと若手のバランスが良く、経験値と勢いを兼ね備えている。
④ 攻撃の多様性
・FW主体のパワーゲームに加えて、バックスもスキルが高く、速い展開ラグビーが可能。
・キック戦術の正確さ(SOやFBの戦術キック、WTBのチェイス)が武器。
・近年は「FWDで押す」だけでなく、「FWDで圧力をかけつつBKで仕留める」パターンも確立している。
⑤ 精神面と勝者の文化
・長年トップクラスで戦ってきた経験から、プレッシャーのかかる場面でも崩れにくい。
・「勝つのが当たり前」というチーム文化があり、選手が代表に呼ばれた時点で高い基準に適応している。
⑥ 協会・リーグの後押し
・イングランドラグビー協会が女子代表を戦略的に支援。
・PWRが女子ラグビーのトップリーグとして発展し、競争力のある国内基盤を支えている。
まとめると、「屈強なFW+安定したセットプレー」「プロ環境による個の強化」「厚い選手層と多様な攻撃力」この3本柱が、レッドローズが世界最強でいられる最大の特徴です。
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レッドローズは、単に「強いチーム」というだけでなく、女子ラグビー全体の成長にとても大きな影響を与えています。特に環境整備や投資面での先進事例となり、他国や World Rugby の動きに波及しているのが特徴です。
2. レッドローズが世界に与えた主な影響
① フルタイム契約の先駆け
・2019年にイングランドラグビー協会が女子選手にフルタイムプロ契約を導入。
・これにより選手は仕事や学業と掛け持ちせず、ラグビー専業で活動可能に。
・他国(ニュージーランド、フランス、オーストラリアなど)もこれを追随し、段階的にプロ契約やセミプロ契約を導入。
・「女子ラグビーも職業として成り立つ」という世界的な前例になった。
② 国内リーグ(PWR)の確立
・イングランド国内で世界最高水準の女子リーグ「PWR」を設立。
・高い競技レベルと観客動員、放送体制が整備され、代表の強化と同時に“見せるプロダクト”として女子ラグビーを商業化。
・他国も国内リーグの充実を進めるきっかけになった(例:ニュージーランドのSuper Rugby Aupiki、フランスのÉlite 1 Féminine)。
③ 投資・スポンサーシップ拡大のモデル
・レッドローズはW杯やシックスネーションズで高視聴率を記録し、女子スポーツとして商業価値を示した。
・大手企業(O2、Alexander McQueen、Sainsbury'sなど)が女子代表にスポンサー契約を結び、「女子チーム単体でのマーケティング価値」を証明。
・この動きは各国の協会がスポンサーに女子ラグビーを提案する根拠になっている。
④ 観客動員の拡大
・2022年にトゥイッケナムでの女子代表戦で53,000人超の観客動員を記録(女子ラグビー単独試合として世界最多)。
・その実績が、他国でも「女子代表戦を大規模スタジアムで開催する」動きに広がった。
・WXVやワールドカップの観客動員数増加にも直結。
・今回のW杯決勝は81,885人を記録。
⑤ 競技レベルのベンチマーク化
・レッドローズのフィジカル・セットプレーの完成度が「世界基準」とされ、各国がそれに追いつくための強化策を取るようになった。
・ニュージーランドやフランスもFWのフィジカル強化やモール対策に投資。
・レッドローズを倒すための強化が、女子ラグビー全体のレベルアップを促している。
⑥ 社会的インパクト
・「女子ラグビー選手がフルタイムで活動できる」ことがメディアで取り上げられ、女子スポーツ全体のプロ化議論を後押し。
・レッドローズの選手たちは教育・メディア活動にも積極的で、女子スポーツのロールモデルとして若年層や次世代選手に影響。
レッドローズは、「プロ化の先駆け(契約環境)」「世界最高峰リーグの運営(PWR)」「商業的成功(スポンサー・観客動員)」を通じて、女子ラグビーを「持続可能なプロスポーツ」に押し上げた存在です。つまり他国が「レッドローズを追う」ことで、世界全体の女子ラグビーが急速に発展している、というのが最大の影響と言えるでしょう。
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3. 日本
日本の女子を振り返ると、もう何年も何十年も世界でも底辺と言える環境でやっています。この環境でサクラフィフティーンは世界ランク11位ですから、よくよく考えたら本当に大したものです、国内リーグ創設や国際大会への定期的参加、(セミ)プロ化や有能なHC招集などの施策が諸外国並みに進めば、TOP10はおろか世界ランク5位くらいになれると自分は本気で信じています。
土田と岩渕の能天気コンビは、足元の問題には目もむけずに、男子W杯2035開催に向け躍起になってるようですが、近年は女子W杯の開催と男子W杯の開催がセットで決まることを忘れてないですかね。来年の第3半期には World Rugby に詳細な申請書を提出しなければならないようですが、それまでに女子ラグビー環境をライバル国並みに整備できる計画や自信があるのですかね。国内リーグも無い国に観客動員を期待できるはずもありませんから。
これが杞憂であることを願って止みません。



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