640 トライラインが遠いキヤノン
2025年12月23日
キヤノンが開幕2連敗を喫しました。昨シーズンから通算6連敗中です。少し遡れば、昨シーズンの第11節以降は1勝9敗です。沢木さんは大好きでしたし、自分が横浜市民ということもあるので、キヤノンはサントリーの次に好きなチームです。キヤノンについて気になったことを書いてみました。
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皆さんは、スタッツに「22m Entries」という項目があるのはご存じでしょうか。
これは以下を表します。
①1試合で何回敵陣の22m以内に侵入したか(Entries)
②侵入1回につき平均何点獲得したか(Avg. Points Scored)
例えば、あるチームがPGもDGも無しで1試合40点得点したとします。22m以内には計10回侵入したとします。そうすると以下のようになります。
①10
②4.0
この値の一般的な平均値は特に明示等されていませんので、あくまで肌感覚ですが、以下くらいでしょうか。
①10前後
②3~5くらい
どちらかと言うと②の値が重要になります。勿論、①22m以内に侵入する回数が多いに越したことはありませんが、例え少なくとも②の数値が高ければ問題ありません。その場合は「効率的に得点できた」とか「数少ないチャンスも確実に得点に繋げた」という解釈になるでしょう。
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キヤノンの「22m Entries」について、昨シーズンの第14節から今シーズンの第2節まで調べてみました(画像)。参考までに現在1位のサントリーと2位のパナソニックの数値も調べました。数値はいずれも
RUGBYPASS
のものです。
キヤノンは②の数値が他のチームに比べて低いです。今シーズンに限っては、圧倒的に低いと言えます。「チャンスは作るが取り切れない」「支配しているのに点が伸びない」――いわゆる決定力が足りないチームには、単なる“フィニッシャー不足”では説明できない、いくつかの構造的要因が重なっていることが多いと思います。
以下に個人的に考えられる、いくつかの要素を整理します。
① 技術的要因(個の精度)
最も分かりやすい層ですが、実は表層にすぎません。
・最後のパス精度(スピードと距離の最適化)
・ハンズの質(捕球姿勢、コンタクト直前の処理)
・フィニッシュ技術(タッチライン際、1対1での決断)
・キック精度(コンバージョン・PG、チップキックの質)
→ ただし、これらは「機会の質」が低いと発揮されにくい。
② 判断スピード・認知の問題
トライゾーン近辺では、判断の遅れは即ミスになります。
・ディフェンスの数的優位を認知できていない
・「もう1フェーズ」「もう1パス」という過剰な安全志向
・逆に、早すぎる仕掛けによる選択ミス
→ 決定力とは「正解を選ぶ力」であり、スキルより判断の一貫性が問われます。
③ アタック構造の問題(設計不良)
意外に多いのが、“形はあるが崩れない”アタックです。
・フェーズを重ねてもディフェンスラインが歪まない
・外に振るが、内側の脅威が不足
・デコイ(おとり)が機能していない
→ 結果として、WTBがボールを持っても「詰まった状態」になる。
④ ブレイクダウンの質
決定力は、トライ前の直前2~3フェーズでほぼ決まります。
・ラック形成が遅く、DFが整ってしまう
・ボール供給が安定せず、SHが迷う
・トライ前での反則(オフサイド誘発失敗)が取れない
→ スピードと整合性がないと、どんな名BKも生きません。
⑤ メンタル・心理的要因
見落とされがちですが、極めて重要です。
・「外したらどうしよう」という失敗回避思考
・連続で取り切れないことによる自己不信の連鎖
・スコア差・時間帯による硬さ
→ 決定力は自信の総量に強く依存します。
⑥ リーダーシップ・司令塔の問題
トライエリアでは、誰が意思決定しているかが曖昧になると迷いが生じます。
・SH/SOが状況を整理しきれていない
・「誰の判断が優先か」が共有されていない
・修正指示がその場で出ない
→ 結果、全体が「様子見」になる。
⑦ トレーニング設計の問題
試合で出ないものは、練習でも磨かれていない。
・スコアリングゾーン専用の練習が少ない
・常に「成功する前提」で組まれたドリル
・プレッシャー下(疲労・数的不利)の再現不足
→ 試合だけで“決定力”は育たない。
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決定力不足とは、「才能がない」のではなく、「崩し切る設計と確信が不足している」状態ではないでしょうか。
上記はあくまで個人的な見解で、どれがキヤノンに当てはまっているのか、あるいは全てが当てはまっているのかまでは正直分かりません。
マクドナルドさんは、SUPER RUGBYのブルーズのHCや、短期間ですがオールブラックスのアタックコーチを務めた指導者です。就任会見などで「よりシンプルに、よりスピーディに」という攻撃的なラグビーを目指すと言っていました。チームは開幕直後は得てしてディフェンスの方が早く仕上がると言います。
日曜の三菱重工戦、敗れはしましたが収穫もあったと思います。SH土永の球さばきやキック、CTB森の獅子奮迅、急遽先発したFB武藤のランなど、いずれも良かったと思います。
怪我人の続出、デクラークの離脱、チームは早くも厳しい局面を迎えています。ただ
・技術 × 判断
・構造 × スピード
・自信 × 役割の明確さ
これらが噛み合ったとき、同じメンバーでも突然「点が取れるチーム」に変貌します。勿論、攻撃が全てではありませんが、今はあくまで成長戦略を模索している段階だと思い、スタッフや選手たちを信じて、これからも(密かに)応援し続けます。(オフィシャル?にはサントリー推しなので(笑))



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