564 ワラビーズの象徴になる可能性 - ジョセフ・アウクソ・スアリイ
2024年11月13日
スアリイは196cm/98kgの21歳。資金難が叫ばれている中で、オーストラリアユニオン協会は、リーグで輝くこの宝石が、ワラビーズに再び十分な輝きをもたらしてくれることを確信し、3年間で270万ポンド(約5億3,000万円)で契約した。
ユニオン初戦のイングランド戦。もしこの試合で、スアリイが何回かボールをキープして、タックルも数回決めたら、ジョー・シュミットと協会は、この未知なる有望選手に多額の投資をした見返りが十分あったと主張するかもしれない、と個人的に思っていた。ただそんな余計な心配が杞憂であることは、キックオフ直前に分かった気がした。
試合直前、カメラが自分の顔を捉えたことに気付いたスアリイはニッコリ笑った。普通の人なら舞台恐怖症に襲われたかもしれない。この若者は明らかにその概念に馴染みがなかったように見えたから。
試合が始まるとスアリイは、すべての中心にいた。終始リラックスしていて余裕さえも感じた。重力をものともしない空中跳躍でマロ・イトジェに何度も競り勝った。
「空中にいる誰に対しても、私は自信を持っています」とスアリイは語った。「それがこの試合での私の強みの1つだとわかっています。ボールが空中にあるときはいつでも、私はボールを取れるとわかっています」
そしてイングランドの中盤を引きつけ、片手でトム・ライトにノールックのパスを送り、オーストラリアの先制トライを奪った。ボールに触れているときも触れていないときも、スアリイは、しっかりと立ち続けた。スアリイは身体全体を駆使して、クロスフィールドのキックオフボールをNBAスタイルで何度もティップオンし続けた。そして試合の最後のリスタートでワラビーズがボールを確保しなければならない最後の数秒で、彼は空中でチャレンジし、イングランドのノックオンを誘い、これが試合の決定打となった。ディフェンス能力も特筆すべきものがあった。ユニオン初戦にも関わらず、個人的には全盛期のイズラエル・フォラウがダブって見えた。
アリアンツ・スタジアムに集まった82,000人の観衆の前で、ユニオン初戦の若者は、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、見事に周囲の期待に応えた。試合を重ねれば重ねるほど、もっとその能力を発揮してくれることだろう。
スアリイは、自分への投資が何を意味しているかを知っているはずだ。来夏にはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズがオーストラリアを訪れ、その2年後には自国でのワールドカップが控えているのだから。
ただ試合後のインタビューは21歳の若者そのものだった。
「ワラビーズのジャージを着る瞬間を、ただただ満喫していました。家族にとっても私にとっても、すごく特別な試合でした。正直に言って、とても楽しかったですし、勝ててうれしかったです」