485 連覇 - 東京山九フェニックス
2024年2月5日
第10回全国女子選手権決勝
PEARLS 24 - 40 東京山九フェニックス
10回目にして初めての秩父宮。しかもクロスボーダーラグビーの後でもあり沢山のお客さんが入った。
試合開始から PEARLS ペース。敵陣で試合を進め、強い FWD でディフェンスを真ん中に集め、最後はオーバーラップを作りWTB三谷 咲月(みたに さつき)が先制トライ。その後もLOタフィト・ラファエレを中心にボールを継続し前進し続けたが、13分にそのラファエレが左肩を負傷し交代、 PEARLS にとってはこれは痛い交代だった。
ただその後も PEARLS は攻め続けたが17分、 PEARLS のパスミスからボールを奪ったフェニックスが素早く左に展開し、SO大黒田 裕芽(おおくろだ ゆめ)がキックで裏へ転がす。 PEARLS は2人が追い付いたが、もの凄いスピードで入って来たWTB野原 みなみ(旧姓:鹿尾)が間隙を縫ってグラウンディング。キックも決まり 5 - 7 で逆転。この一連のプレーで試合の流れがフェニックスに傾いたような気がした。
その後、まるで男子アイルランド代表のように FWD とバックスが見事に連動した攻撃を見せるフェニックス。25分にはPR岸本 彩華(きしもと いろは)からの絶妙なパスを受けたFB松村 美咲(まつむら みさき)が観たことないようなステップで目の前の相手をかわし、そのまま大きくゲインしゴール前へ。左に空いたスペースを見逃さなかったSO大黒田がキックパス。またもWTB野原がキャッチしインゴールへ。続く難しい角度からのコンバージョンも大黒田が沈めた。この時の客席のどよめきは「こんなに女子ラグビーってレベルが高いのか!?」のどよめきだと感じた。
その後攻守交替が続く29分、フェニックスが相手PRの突進を受け止めて跳ね返すビッグタックルを炸裂させる。凄まじいタックルをお見舞いしたのは、またも、SO大黒田。堪らず PEARLS が反則。そこからモールで押し込み、またまたSO大黒田が絶妙のゴロパントを裏に転がす。それをFB松村がグラウンディング。5 - 21 とフェニックスが差を広げる。大黒田がリッチー・モウンガやボーデン・バレットや田村 優とダブって見えた。
しかし前半終了間際、 PEARLS のPR永田 虹歩(ながた にじほ)の突破でゴール前へ。最後はLOブリアナ・ホイがねじ込み、12 - 21 と追い上げる。
そして後半早々にもフェニックスがゴール前に迫る。ただボールが繋がらず PEARLS ボールに。ピンチ脱出かと思った瞬間、フェニックスのFL高橋 李実(たかはし ももみ)が猛チャージ。こぼれ球をFL鈴木 実沙紀(すずき みさき)がグラウンディング。12 - 28 と引き離す。
さらに51分、 PEARLS の反則から敵陣に入り、ラインアウトモールからゴール前に迫り、左に大きく空いたスペースにSO大黒田からWTB野原にラストパス。これで野原はハットトリック達成の大活躍。またまた大黒田が難しい角度を沈めて 12 - 35 とリード。
これで勝負ありかと思ったが、 PEARLS も粘りを見せる。56分にはFL木下 そよ香(きのした そよか)がフェニックスのキック処理ミスを見逃さず、反撃のトライを挙げ 19 - 35。
その後は決勝に相応しいハイレベルの攻防が続き、試合は膠着状態に。そして71分、試合序盤からキレキレの走りを見せていた PEARLS のFB庵奥 里愛(あんおく りあ)がグラウンド中央から右に大きくブレイク。ラックからボールが出る間に大きく左に移動していたFB庵奥からFL高橋へ、最後はWTB三谷に渡りインゴールへ。24 - 35。この時間帯でもまだまだ走れる PEARLS のフィットネスに感動した。
連続トライで11点差まで迫られたフェニックスだったが、ここから試合巧者ぶりを発揮し、じっくり敵陣で試合を進める。そして試合終了間際のラインアウトから、リーグワンでもお目にかかれないような見事なサインプレーによる大きなサイドチェンジでゴール前までCTB古田 真菜(ふるた まな)が運び、ラストは途中出場のPR髙木 恵(たかぎ めぐみ)が豪快なジャンピングトライで試合を締めくくった。
決勝に相応しい、レベルの高い好ゲームだった。そして単純に観てて楽しかった。 PEARLS はフィジカルで勝負したかっただろうから、途中でも書いたがLOラファエレの負傷が大きかった。あとはSUPER RUGBY AUPIKIに挑戦する齊藤 聖奈(さいとう せいな)の姿も観たかった。
これでフェニックスは2季連続2度目の優勝。チームを率いるのは稀代の戦略家・四宮 洋平(しのみや ようへい)さん。誰よりも精力的に海外にも飛び回り、どんどんパートナーシップ契約を締結してくる。チームは2/19からはオーストラリアに遠征し、スーパーW(スーパーラグビー女子)のプレシーズンの国際トライアルゲームに参戦する。4月には今年も香港10’sに参加する予定だ。こんなに海外転戦を続けるチームはフェニックス以外にない。全員走れる強力なフロントロー、ラインアウトの要の両LO、ワークレートの高いバックロー、ゲームメイクに秀でたハーフ団、誰もがフィニッシャーになれるバックス。この決勝戦で文字通り名実ともに日本一のチームであることを証明した。
一方、女子の試合を観るたびに、国内での試合数、大会数が少ない現実に悲しくなってくる。毎回イングランドの例を出して恐縮だが、現在女子世界No.1のイングランドは女子シックスネーションズ5試合、WXV含めその他テストマッチ数試合、Premiership Women's Rugby(国内リーグ)が18試合+プレーオフと年間30試合くらいをこなしている。日本はOTOWAカップ、関西大会、女子選手権の数試合だけ。これでは折角参戦できたWXV2でいい結果を残すのは至難の業だ。口を開けば「もう1度W杯を日本で」としか言わない日本ラグビー協会会長に、もっともっと女子ラグビーの発展を考えて欲しい。
あと、これは去年から思っていたことだか、もっとフェニックスからはサクラフィフティーンに選ばれるべきだと思う。去年も日本一になったが、去年のサクラ15のテストマッチ9試合でメンバー入りしたフェニックスの選手はわずか3人だった。(古田 真菜:6試合、小鍜治 歩:5試合、松村 美咲:5試合)※間違ってたらすみません
今年は今日のMVPのSO大黒田を始め、PR岸本、PR柏木 那月(かしわぎ なつき)、HO塩崎 優衣(しおざき ゆい)、両FL高橋、鈴木、WTB野原、CTB岡元 涼葉(おかもと すずは)らも是非選ばれて欲しい。
↑