457 日本代表の4年間 ~ジェイミー・ジョセフが犯した過ち~


2020年


6月1日 JSRAの渡瀬裕司CEOが発表

「サンウルブズが正式に大会参戦が不可能になった旨、通達を受けた」



この年の日本代表は、テストマッチを1試合も組めなかった。

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◆ この年の主な強豪国のテストマッチ数
・ニュージーランド/オーストラリア:6試合
・イングランド/アイルランド/フランス:5試合



2021年


6月12日  日本代表 32 - 17 サンウルブズ

日本代表は、601日ぶりの実戦だった。日本代表は前半 3-14 と苦戦したが、後半から起用されたSH斎藤 直人やWTBシオサイア・フィフィタら新戦力が活躍し、No.8テビタ・タタフのトライで勝ち越した。サンウルブズはSO山沢 拓也やWTB尾崎 晟也が好調で秋の日本代表入りへアピールした。



6月26日 B&Iライオンズ 28 - 10 日本代表

初キャップ: クレイグ・ミラー /ジャック・コーネルセン / 齋藤 直人 /シオサイア・フィフィタ

日本代表は、途中からNo.8に入ったテビタ・タタフがダン・ビガーを吹っ飛ばし会場を沸かせ、世界レベルの実力を見せつけた。日本代表の唯一のトライ、59分のFL姫野 和樹を後ろから抱きかかえインゴールにねじ込んだのもテビタ・タタフだった。



7月3日 アイルランド代表 39 - 31 日本代表

初キャップ: セミシ・マシレワ / シェーン・ゲイツ

日本代表は、43分までは 24 - 19 とリードしたが、51分にキープレーヤーのひとりであるFB松島 幸太朗が負傷交代し状況は苦しくなり惜敗した。



★ 6月、7月のヨーロッパ遠征を終えて、藤井 雄一郎ディレクター

2021.07.06 ラグビー・リパブリックより抜粋

「(日本代表の)スコッドに外れた選手が、次のレベルでやるチームがない。ちょっといいなと思う選手を、代表の次のクラスで国際レベルの試合を経験させたいなと思っている。サンウルブズがなくなってしまったので、若い選手にどうやって経験を積ませるかというので悩んでいる。例えば、トップリーグで1チーム作って若い選手を大会に出させるとか、トップリーグに出させるとか、そういうチームを作っていかないと。ちょっと見たい選手が、自分たちのやりたいラグビーのなかでできるかどうかというのがなかなか見られない状況なので」



10月23日 日本代表 23 - 32 オーストラリア代表

初キャップ: ベン・ガンター / ディラン・ライリー

日本代表は、74分までは 23 - 27 と4点差だったが、78分にラインアウトモールからトライを許し惜敗した。



11月6日 アイルランド代表 60 - 5 日本代表

日本代表は、7月の対戦では不在だったジョニー・セクストンやB&Iライオンズメンバーを揃えたほぼベスト布陣のアイルランドに惨敗した。前半からボールポゼッション、テリトリーの支配率ともアイルランドが圧倒し、日本代表はタックルミスもラインアウトミスも多かった。

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★ 試合後のジェイミー・ジョセフHC

2021.11.07 日本代表対アイルランド代表
男子日本代表チーム 試合後コメントより抜粋


「アイルランド代表は素晴らしかった。また100キャップのセクストン選手については大変偉大な選手だと思う。パンデミックの影響によって試合も少なく、次のワールドカップに向けて日本の準備は遅れているのは確かだ。この遅れはチームとして取り戻していかなければならない。どのラグビーユニオンにとっても難しい条件は同じだ。非常に強いアイルランド代表と今回戦うことができ、引き続き我々ができること、ヘッドコーチとしてやるべきことをやっていきたいと考えている。今日は我々のディフェンスがいくつかうまくいかなかった。ラグビーとしては非常に良いゲームだったと思う

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< この年の主な強豪国のテストマッチ数 >
ニュージーランド:15試合 / オーストラリア:14試合 / 南アフリカ:13試合
フランス:11試合 / イングランド/アイルランド:10試合
日本:6試合



11月14日  ポルトガル代表 25 - 38 日本代表

初キャップ: 中野 将伍 / ワーナー・ディアンズ

日本代表は、大敗した前週のアイルランド代表戦から先発メンバーを10人替えて臨んだ。けが人が相次ぐなか、経験が少ない選手にもチャンスが与えられたのは収穫だったが、ペナルティを多発し、ポルトガルに61分までは 25 - 28 のわずか3点のリードの辛勝だった。CTB中野 将伍の攻守に渡る活躍が印象に残った。

※当時のランキング:日本10位、ポルトガル19位



11月20日 スコットランド代表 29 - 20 日本代表

日本代表は、64分に途中出場のNo.8テビタ・タタフが力強く突進してこの試合チーム初トライを決めた。72分まで 26 - 20 と追いすがるも惜敗した。



★ 11月のヨーロッパ遠征を終えて、藤井 雄一郎ディレクター

2021.11.24 ラグビー・リパブリックより抜粋

「日本も次のフェーズに入っていかないとワールドカップでは戦えない、というのはコーチ陣もずっと話していた。世界がどういうふうに動いていくかということと、日本の強みをどの部分で出していくかというのは今回の欧州遠征ではだいたい見えてきたんじゃないかなと思うので、そのへんはシフトしていくと思う

「次の世代にいい経験をさせてやれていない。サンウルブズがなくなった影響もあるし、クロスボーダーの大会もまだ見えていない。そういう意味では、全体のポジションが薄い。特にロックは、(負傷者離脱が相次いだこともあり)フランカーの選手がカバーすることもある。ディアンズ(ワーナー・ディアンズ。19歳の長身ロック。ポルトガル戦でデビュー)とか、今後上がってくれば厚みは出てくると思うが、全体的に薄い。(平均)年齢もだんだん上がってきている。たくさん経験がある選手のなかで1人2人徐々に替えていくか、それともゴッソリそっち(将来)に向けて戦うか、どっちかにシフトしていかないと、23年以降は厳しいんじゃないかと思う

「国内のリーグワンだけではなくて、国際レベルの試合をより多くの選手に積ませたいという思いはある。それに、(下からの)押し上げがないとトップの選手たちにプレッシャーがかからない。今回、ポルトガル戦で中野選手(中野将伍)などが経験できたというのは、トップリーグ10試合分くらいの価値があると思う。リーグワン以外のところで経験させてやる場が必要だと思う



2021年の戦績(テストマッチのみ):1勝5敗


2022年


5月30日 NTTリーグワンアワード2022決定

・新人賞/ベストラインブレイカー/ベストフィフティーン:根塚 洸雅
・最多トライゲッター:山下 楽平
・ベストフィフティーン:小川 高廣



6月11日 エマージングブロッサムズ 31 - 12 トンガサムライフィフティーン

リザーブ予定だったNo.8テビタ・タタフが急遽80分出場、トライにジャッカルに爪痕を残した。



6月18日  日本代表 34 - 15 ウルグアイ代表

初キャップ: 淺岡 俊亮 / 飯野 晃司 / 根塚 洸雅 / 竹山 晃暉 / 海士 広大 / 竹内 柊平 / 秋山 大地 / シオネ・ラベマイ / メイン 平

日本代表は、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)のメンバーで編成された。試合開始早々、WTB根塚 洸雅が代表初トライを挙げた。そして後半、FLシオネ・ラベマイ、FBメイン 平など代表デビューとなったフレッシュレッグの投入でチームに勢いが生まれ、5年ぶりのテストマッチ出場となったHO日野 剛志の2トライなどで勝利した。

※当時のランキング:日本10位、ウルグアイ19位



6月25日  日本代表 43 - 7 ウルグアイ代表

初キャップ: ゲラード・ファンデンヒーファー / サナイラ・ワクァ / 李 承信

日本代表は、5年ぶりのテストマッチ出場となった山沢 拓也が10番で先発しチームを牽引し、CTB梶村 祐介やこの日代表デビューのWTBゲラード・ファンデンヒーファーらのトライで圧勝した。そして4年ぶりのテストマッチ出場のFB 野口 竜司、キック、キック処理、フィールディング、カバーリング、サポート、どのプレーをとっても際立っていた。



7月2日 日本代表 23 - 42 フランス代表

初キャップ: 森川 由起乙 / 髙橋 汰地

日本代表は、先発予定だったSO山沢 拓也がコロナでメンバーを外れた。14分、No.8のテビタ・タタフの逆転トライもあり、前半 13 - 13 で折り返すも、後半は自力で勝るフランスに押し切られた。

ちなみにフランス代表は、TOP14でプレーオフを戦ったアントワーヌ・デュポン / ロマン・ヌタマック / シリル・バイユ / キャメロン・ウォキ / アンソニー・ジェロンチ / グレゴリー・アルドリッド / ガエル・フィクーらの主力は欠場した。



7月9日 日本代表 15 - 20 フランス代表

初キャップ: 辻 雄康

日本代表は、67分まで 15 - 13 とリードも惜敗した。74分、No.8テビタ・タタフが力強く突進して青い壁を破り、トライかと思われたが、TMOでグラウンディング寸前に落球していたことが確認され同点とはならなかった。



★ 夏のテストマッチを終えて、藤井 雄一郎ディレクター

2022.07.10 ラグビー・リパブリックより抜粋

「山沢(拓也)と李承信も試合に出られたし、計算できる選手になっていくんじゃないかなと思っている」

「今回のように完全に2チーム(日本代表とNDS)に分けてということはしない。少しコーチの数を増やして、より細かいコーチングを若い選手に受けさせて、そのなかで競争を促していきたい



★ オーストラリアA代表との3連戦(テストマッチ非対象)を前に、藤井 雄一郎ディレクター

2022.09.28 JAPAN XV( ジャパン・フィフティーン) 対オーストラリアA代表
開催のお知らせより抜粋


「スーパーラグビーへの参戦がなくなった今、強豪国のトップクラスのメンバーと試合ができるということは、選手達にとって、特に若い選手にとってこの3試合は非常に貴重な経験になります。試合から離れていた選手にとってはハイレベルのインテンシティの感覚を取り戻すこと、若い選手にとってはハイプレッシャーの中でのパフォーマンスと正確な判断の向上、そしてワールドカップメンバー選考にどこまでアピールできるか。色々なチャレンジの中から、オールブラックス、イングランド、フランス戦へ繋げていければと思っています」



10月1日 JAPAN XV 22 - 34 オーストラリアA

日本代表は、60分までは 22 - 20 でリードしていたが、終盤に逆転された。ちなみに山沢 拓也は控えメンバーにも入っていなかった。



★ 明日のオーストラリアA代表との2戦目を前に、ジェイミー・ジョセフHC

2022.10.07 ラグビー・リパブリックより抜粋

「2 minutes.」

ジェイミー・ジョセフ監督がこの試合に向けて掲げたキーワードだ。

相手のプレーに対する順応と対応(アジャスト)、自分達から仕掛けるプレーのリセットの速さと精度。それを、「この先2分間において何をすべきか」に絞って見極め、意思統一をして戦うことを指している。



10月8日 JAPAN XV 21 - 22 オーストラリアA

日本代表は、試合終盤まで 21 - 15 とリードしたが78分、自陣ゴール前、相手ラインアウトモールをコラプシング、その後再びラインアウトモールを押し切られ逆転負けを喫した。
まさに「2 minutes.」



10月14日 JAPAN XV 52 - 48 オーストラリアA

日本代表は、オーストラリアAとの3連戦で初先発No.8テビタ・タタフの2トライの活躍で勝利した。



★ オーストラリアA3連戦の出場メンバー

< 一度もメンバー入り出来なかった選手 >
具 智元 / 大戸 裕矢 / 古川 聖人 / 茂野 海人 / 梶村 祐介 / シェーン・ゲイツ / 根塚 洸雅 / メイン 平



10月29日 日本代表 31 - 38 ニュージーランド代表

初キャップ:下川 甲嗣

日本代表は、先発したSO山沢 拓也が1トライを含む12得点をマークするも惜敗した。

ちなみにニュージーランドはバレット3兄弟 / サム・ホワイトロック / アーディー・サヴェア / リーコ・イオアネ / ウィル・ジョーダンらの主力は欠場した。



11月13日 イングランド代表 52 - 13 日本代表

日本代表は、ミスとペナルティを連発、イングランドの勢いを止められず惨敗した。

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★ 試合後のジェイミー・ジョセフHC

2022.11.13 日本代表「リポビタンDツアー2022」イングランド代表戦
試合後コメントより抜粋


「我々はスタートが遅く、スクラムなどでもミスがありました。イングランドの体力に対しての弱さが出てしまい、イングランドのプレッシャーに勝てなかったというところが大きく、イングランドの強さには脱帽です。彼らのボール選択も素晴らしかったと思います。我々にとって良いゲームと言うこともできますが、言い訳は出来ない。まだまだ改善すべき点はいっぱいあると思います。しかし、相手の流れを止めるこができた場面があったのは良かったですし、トゥイッケナムで若い選手達が経験を積めたことは重要なことです。まだまだこれから成長していくと思います。先週は我々もビッグマッチがあり、1週間たって状況も変わってきているが、また来週大きな試合があるので、どうなるか見ていきたいと思います」



11月20日 フランス代表 35 - 17 日本代表

初キャップ: 中尾 隼太
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★ 試合後のジェイミー・ジョセフHC

2022.11.21 日本代表「リポビタンDツアー2022」フランス代表戦
試合後コメントより抜粋


「自分たちのパフォーマンスもそうでしたが、しっかりとした強い意志が見えたと思っています。特にフィジカルの部分では先週からの反省点をしっかり出せたと思いますし、そこでプレッシャーをかけることができたと思っています。フランスもすごく強かったですが、来年ワールドカップでまたここに来ることになりますし、このトゥールーズでプレーできたことも自分たちにとってはプラスになったと思います。ティア1のチームと試合をすることに慣れておきたいと思っていますし、今年はたくさん試合ができましたので、ワールドカップに向けていい方向に向かっていると思っています



2022年の戦績(テストマッチのみ):2勝5敗



12月5日  ウェールズラグビー協会が成績不振を理由にウェイン・ピヴァックHC解任を発表



12月6日  イングランドラグビー協会が成績不振を理由にエディー・ジョーンズHC解任を発表


2023年


1月16日  オーストラリアラグビー協会が成績不振を理由にデーブ・レニーHC解任を発表



5月22日 NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23アワード決定

・MVP(Div1):立川 理道
・最多トライゲッター/ベストフィフティーン:尾﨑 晟也
・ベストラインブレイカー/ベストフィフティーン:木田 晴斗
・ベストフィフティーン:野口 竜司



5月24日 6月からの日本代表合宿参加メンバー発表


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★ ジェイミー・ジョセフHC

2023.05.24 ラグビー・リパブリックより抜粋

いかなるプレッシャーの中でも一貫したプレーができる選手ということでこのメンバーを選考しました。浦安合宿ではコンタクトエリアでの攻防におけるタックル精度をナショナルレベルまで引き上げていくことを狙いとし、チーム力をより向上させ、より強固な絆を作っていきたいと考えています。そして、7月から始まる国内テストマッチ、その先に待つ本番への準備を加速させたいと思っています」

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◆ 今回名前がなかった選手
・昨年日本代表の10番をつけた、日本随一のユーティリティ山沢 拓也
・リーグワンのトライ王となった、ラグビーIQの高い尾崎 晟也
・リーグワンのベストフィフティーンに選出された、空中戦のスペシャリスト野口 竜司
・リーグワンMVPを受賞した、クボタの精神的支柱のベテラン立川 理道
・キヤノンの4強入りに貢献したベテラン田村 優 / キャプテン梶村 祐介



★ All Blacks XVとの2連戦(テストマッチ非対象)を前に、ジェイミー・ジョセフHC

2023.07.06 ラグビー・リパブリックより抜粋

「彼らがこういう試合を経験してどこまでステップアップできるか見てみたい。プレッシャーのなかでどれだけプレーできるか、見てみたい。ワールドカップまで6試合ある。これからどんどん試合を重ねていくにあたり、試合はタフになってくる。ワイダートレーニングのメンバーもいるし、バランスを見ていきながら選手たちに出場機会を与えていきたい



7月8日 JAPAN XV 6 - 38 All Blacks XV

テストマッチ未経験者の5名がメンバー入り
アマト・ファカタヴァ / 福井 翔大 /ジョネ・ナイカブラ / シオネ・ハラシリ / 長田 智希

オールブラックス代表予備軍にノートライで大敗したが、CTB中野 将伍の強烈なタックルとFL福井 翔大のジャッカルが印象に残った。



7月15日 JAPAN XV 27 - 41 All Blacks XV

坂手 淳史との共同主将だが姫野 和樹が初めて主将を任された。
日本代表は、後半28点差とされてから反撃したが、遅すぎた。

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★ 試合後のジェイミー・ジョセフHC

2023.07.15 ラグビー・リパブリックより抜粋

「自分たちのラグビーができたところもたくさんあった。選手たちのトライを獲りにいく意志、やる気はすごくあったと思う。しかし、質の高いチームに対してミスをしてしまうと、罰を受けることになってしまう。ミスをなくすことができればテストマッチでも勝てると思う。ただ、ミスはなくさないといけないが、自分たちらしいラグビーはしっかりやっていってほしい。自分たちが成長していくなかで、しっかり自信をつけていってもらいたい。毎日毎日、日々改善して、チームを作り上げていきたい」



7月22日  日本代表 22 - 24 サモア代表

初キャップ: アマト・ファカタヴァ / 福井 翔大 / ジョネ・ナイカブラ / 長田 智希

日本代表は、前半30分、FLリーチ マイケルが危険なプレーで一発退場した。



7月29日  日本代表 21 - 16 トンガ代表

日本代表は、今年初出場のFLベン・ガンターの好タックルが印象に残った。

※当時のランキング:日本10位、トンガ15位



8月5日 日本代表 12 - 35 フィジー代表

日本代表は、8か月振りに代表復帰を果たしたFLピーター・ラブスカフニが、試合開始わずか7分に危険なタックルで一発退場し、大敗した。



8月15日  W杯 日本代表メンバー発表(33人中30人)

PR:稲垣 啓太 / クレイグ・ミラー / シオネ・ハラシリ / 具 智元 / 垣永 真之介 / ヴァル アサエリ愛
HO:堀江 翔太 / 坂手 淳史 / 堀越 康介
LO:ジェームス・ムーア
LO/FL:ジャック・コーネルセン
FL:ベン・ガンター / 姫野 和樹 / 福井 翔大 / リーチ マイケル

SH:齋藤 直人 / 流 大 / 福田 健太
SO/FB:小倉 順平
SO:李 承信 / 松田 力也
CTB:長田 智希 / 中野 将伍 / 中村 亮土 / ディラン・ライリー
WTB:ジョネ・ナイカブラ / シオサイア・フィフィタ / セミシ・マシレワ
WTB/FB:松島 幸太朗 / レメキ ロマノ ラヴァ

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★ ジェイミー・ジョセフHC

2023.08.15 ラグビー日本代表、ワールドカップメンバー発表記者会見の詳細より抜粋

2019年ワールドカップ以来、全くジェイミージャパンの試合に出場していないWTB(ウイング)レメキ ロマノラヴァ選手については、「グリーンロケッツではSO(スタンドオフ)、FB(フルバック)、CTB(センター)としてもプレーし、チームを支えた。彼がBKの(選手選考の)一例だ」。

また、2019年ワールドカップでも中軸としてプレーし、7月のサモア代表でも15番を背負い先発したFB山中亮平の落選については「山中のような素晴らしい選手がセレクションから外れた。彼は15番のスペシャリストですが、リーグワンの神戸の試合の時に10番でプレーするのを見たかったが、その機会がなかった

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ちなみにジェイミーHCと主将の姫野 和樹、副将の流 大は同じマネジメント会社所属なのは有名な話だ。(電通が株式100%取得の 「Halo Sport」



8月18日  W杯 日本代表メンバー追加/離脱メンバー発表

追加 - LO:サウマキ アマナキ / ワーナー・ディアンズ / ヘル ウヴェ
   FL:ピーター・ラブスカフニ
離脱 - LO:ジェームス・ムーア

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平均年齢29.1歳、これは全20チーム中、上から5番目の高年齢

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< ジェームス・ムーアの今夏の出場時間 >
07.08 All Blacks XV戦:80分
07.15 All Blacks XV戦:59分
07.22 サモア戦:80分
07.29 トンガ戦:33分
08.05 フィジー戦:80分



8月27日 イタリア代表 42 - 21 日本代表

日本代表は、SO李 承信、松田 力也のキックが全く決まらなかった。最後は疲れから集中力を欠いた日本は2本のトライを立て続けに許し、終わってみればダブルスコアの完敗だった。

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★ 試合後のジェイミー・ジョセフHC

2023.08.27 「リポビタンDツアー2023」日本代表 イタリア代表戦試合後コメントより抜粋

「今日は安定したプレーができない時間帯が多かったです。後半は選手たちも頑張って試合を取り戻そうとしましたが、自滅が多すぎたと思いますし、試合を通じてプレッシャーをかけ続けることができませんでした。この部分は課題ですが、今後ベストな選手を出せれば安定感も出てくると思います



9月10日  W杯プールD第1戦 日本代表 42 - 12 チリ代表

日本代表は、LOアマト・ファカタヴァの2トライなどで勝利した。



9月18日  W杯 日本代表離脱選手および招集選手のお知らせ

離脱選手 - セミシ・マシレワ
理由:負傷のため

招集選手 - 山中 亮平



9月18日  W杯プールD第2戦 イングランド代表 34 - 12 日本代表

日本代表は、49分に1点差まで迫るも後半引き離され、ノートライで敗れた。



9月29日  W杯プールD第3戦 日本代表 28 - 22 サモア代表

日本代表は、流 大の代わりに急遽先発したSH齋藤 直人が活躍し逃げきった。



10月8日  W杯プールD第4戦 日本代表 27 - 39 アルゼンチン代表

日本代表は、LOアマト・ファカタヴァやSH齋藤 直人がトライを奪うなどして接戦に持ち込んだが、最後は突き放された。



2023年の戦績(テストマッチのみ):3勝5敗



2019RWC以降の戦績(テストマッチのみ):6勝15敗
勝率:0.286(6勝の内訳:格下から5勝、サモアから1勝、Tier1には全敗)



個人的見解


1. 4年間の流れ

2020年のサンウルブズの活動停止。日本ラグビー協会が10億円を出し渋ったのか、あるいは日本ラグビー協会内部の人間関係が引き金か。本当の理由は知る由も無いが、結果的に取り返しのつかないことをした。そしてこの年、コロナを理由に1試合もテストマッチを組めなかった日本ラグビー協会の体たらく。勿論、諸外国と日本ではコロナの対応基準が違ったのだろうが、コロナ禍でも年に5~6試合実施した国々もある。2019RWCで沸騰した国民のラグビー熱が一気に冷めた印象だ。

2021年は10月までは、ジャック・コーネルセン / 齋藤 直人 / シオサイア・フィフィタらの初キャップ組を含めた新戦力も台頭し、アイルランド、オーストラリアに善戦した。しかし11月のアイルランドとの再戦。フルメンバーのアイルランドに見るも無残に惨敗した。ここからジェイミージャパンの歯車が徐々に狂っていった印象だ。

2022年、格下のウルグアイの連勝するも、2軍のフランスに連敗。そして極めつけがオーストラリアA代表との3連戦。初戦に敗戦したのがきっかけか、その後、勝利に拘り過ぎて3試合とも同じようなメンバーで戦い、W杯に備え若手を使う絶好のチャンスを逃した。そして秋のヨーロッパ遠征。イングランドに惨敗。デュポン以外1軍メンバーを揃えたフランスに普通に敗戦した。

そして2023年W杯イヤー。W杯までに1勝5敗。W杯本番は2勝2敗。辛うじて次回W杯出場権を獲得するに留まった。


2. 選手選考 / 起用

個人的に一番理解不能だったのが、ジェイミーHCと藤井ディレクターの選手選考だ。リーグワンで明らかに活躍したのに選ばれなかった選手が、あまりにも多過ぎた。以前から選手の選考や起用に偏りが目立ったが、今年は特に酷かった印象だ。例えばW杯メンバーに限っても、特にBACKS陣。立川 理道 / 根塚 洸雅 / 山沢 拓也 / 野口 竜司 / 田村 優 / 梶村 祐介 / 尾崎 晟也などが選ばれなかった。W杯の主力メンバーとして期待されたある選手は「出場機会すらないのだから、呼ばれても行かない」と、2023年6月からの日本代表の活動を辞退したと聞く。自分は、今よりもっと弱かった頃の日本代表も観てきたが、海外の国々より実力が劣ってたとしても、メンバー選考にここまで疑問や不信感を抱いたことは一度もなかった。社会人リーグやトップリーグで活躍した選手達は漏れなく日本代表に選ばれた。勿論現在でも、海外の代表はそれぞれの国内リーグなどで活躍している選手ばかりだ。

特に山沢 拓也の落選には言葉を失った。ジェイミーHCが選手選考で重要視していたのが「ユーティリティ性」。これを日本で一番体現しているのが山沢 拓也だと思う。SO / WTB / FBも出来る。パス / ラン /キック / ハイボール処理など全てにおいて日本で最も高いレベルの技術を誇っている。そして何よりジェイミーHCの戦術(後述の4. 戦術で詳細を記載)に最も適しているのが山沢 拓也だ。恐らく何か深い理由があるのだろうが、外野から見ている分には単なる好き嫌いだとしか見えない。

あと自分がファンだからというバイアスを抜きにしても、最も失望したのがテビタ・タタフの落選だ。公には怪我の為と言われているが、噂レベルでは落選の理由を色々耳にした。未だに本当の理由は『闇の中』だ。テビタ・タタフは出場時間が短いにもかかわらず、2019年以降のテストマッチで日本代表で一番多くトライを獲ってきた。その実力は、今更ここで書くこともないだろう。世界No.1の実力と人気を誇るTOP14が、日本選手で唯一テビタ・タタフに声がけしてきたのがその証拠だ。先週のトゥールーズ戦も観たが大活躍していた。

山沢 拓也とテビタ・タタフがメンバーに入っていない日本代表。自分はこの時点でW杯の日本代表に対する期待感は捨てた。応援はするが期待はしない。

これは推測だが、今年のW杯に向けた準備期間は3か月弱。2019年の準備期間は約6か月。ジェイミーHCは自分の戦術や合宿の過ごし方をよく知ってるベテラン選手やお気に入りの選手たちを多く配置することで、チームの熟成スピードを速くしようと目論んだのではないだろうか。ジェイミーHCも、当初はきちんと若手を育てる意志もあったのかもしれない。ただテストマッチで連戦連敗が続き、どうしても結果(勝利)を優先しなくてはならなくなり、レギュラー組の調整や連係向上に時間を割かねばならず、控え組や若手選手を育て上げるまでには至らなかったのかもしれない。そしてどこかのタイミングで、試合の順番や試合間隔に恵まれた今回のW杯では、とにかく一戦必勝を狙うチームづくりへと、大きく舵を切ったのかもしれない。

選手起用も納得できない部分が多かった。さんざんバックスリーの主力として起用していたシオサイア・フィフィタ / ゲラード・ファンデンヒーファー / 山中 亮平を、W杯本番ではガラッと違う顔ぶれに変えた。特に山中 亮平の落選理由が「神戸で10番(スタンドオフ)をプレーしていなかった」。理不尽にも程がある。そしてW杯のイングランド戦で負傷したセミシ・マシレワの代わりに山中 亮平を招集した。FBも出来る小倉 順平が控えにいるのにもかかわらず、だ。迷走 / 心変わり / その場しのぎ、色んな言葉が頭をよぎった。

そしてW杯前の夏の連戦での選手起用。LOジェームス・ムーアを使い過ぎてコンディション不良に陥らせ、W杯本番で使うことが出来なくなった。アマト・ファカタヴァも同様で、結果的にW杯には間に合ったがW杯前の連戦で疲弊させてしまった。 そこにはフランスのファビアン・ガルティエ監督のようなインテリジェンス、グランドデザインの構築力の欠片は感じられず、計画性の無さを露呈した。

そして合宿や練習中の怪我が目立った印象だ。LOワーナー・ディアンズは6月の浦安合宿中に肩を負傷し、8月の宮崎合宿では左足首を負傷した。ディアンズは日本のラインアウトの要だ。W杯はジャック・コーネルセンやファカタヴァを起用して何とか乗り切ったが、この2人の本職はFLだ。LOは専門職。日本のラインアウトが最後まで安定しなかったのも、これが要因の1つかもしれない。怪我は仕方ない部分はあるが、例えばアイルランドやニュージーランドはW杯本番にチームのピークをきっちり合わせてきた。フランスや南アフリカも主要メンバーに怪我があったものの、それを選手層の厚さでカバーした。選手層の薄い日本代表においてはチームのピーキングも大きな課題となったと思う。


3. 選手層

2022年はフランスやニュージーランド、W杯ではイングランドやアルゼンチンといった強豪と対戦し、試合途中までは互角に戦いながらも、残り20分くらいで、相手ボールスクラムでプレッシャーを受けたり、密集近くで前進を許したりする場面が目立ち、追い上げるべき時間帯に逆に突き放された。先発メンバーは明らかに疲弊し、交代メンバーも大きなモメンタム(勢い)を作り出せない。諸外国と比べて強度の高い試合を戦う機会が少なかったことも要因の一つではあると思うが、一番の理由は選手層の薄さだと思う。

W杯の1次リーグで出場した日本代表の選手は計29人だったが、この数はフィジー、ジョージアと並んで全チームで最少だ。一方で8人が全4試合に先発し、この8人を含む計18人が途中出場を含めて全4試合に出場している。前回のW杯大会よりも1次リーグの期間が1週間延びたことで、日本は全ての試合が中6日以上と日程面でも恵まれ、皮肉なことにベテランがより多くの試合に出やすい状況だったのかもしれないが、「優勝」を掲げて実質2チーム制で1次リーグを戦い抜いた強豪国とは明らかな差がある。

全てのポジションで選手層の薄さは気になるが、個人的に特に気になったのがフロントローとLO。先発メンバーの時はビクともしなかったスクラムが、後半メンバー交代した途端に不安定となった。フロントローは他のポジションに比べて多くの経験の積み重ねが求められるため、育成には時間がかかる。その育成を疎かにして来たツケが回ってきたのかもしれない。LOも同様だ。

W杯が1年後に迫った2022年には、代表活動の遅れを取り戻すべく、春には正規の日本代表と別のナショナルデベロップメントスコッド(NDS)が構成され、合計70人規模で活動を実施した。2022年6月、NDSメンバーだけで編成された日本代表が、ウルグアイ戦に快勝した時はワクワクしたのを覚えている。これから彼らNDSメンバーが次々に正規の日本代表入りするだろうと思った矢先の7月だった。藤井ディレクターのインタビュー。「今回のように完全に2チーム(日本代表とNDS)に分けてということはしない。少しコーチの数を増やして、より細かいコーチングを若い選手に受けさせて、そのなかで競争を促していきたい」。理由が判然としなかったので、個人的にショックは大きかった。

4年後のW杯、再び8強入りを果たす選手層を作るには、再びスーパーラグビーに参戦し、W杯イヤーは年明けから長期合宿を張るというのは、あまりにも解決策としては短絡的すぎると言えるだろう。リーグワンは24~25年シーズンのフェーズ2から試合数を増やすと聞く。時期が重複するスーパーラグビーの参戦も、長期合宿も不可能だろう。その中で最も現実的なプランの一つが、NDSの常設化とその実戦機会の創出だと自分は思う。


4. 戦術

2016年、ジェイミーHCはコーチのトニー・ブラウンと共に「4ポッド」を日本代表に採用した。ジェイミーHCは2015年にスーパーラグビーのハイランダーズを率いて優勝した。このチームはあまり大きな選手がいなかったのにもかかわらずこの戦術でチームを優勝に導いたので、日本代表にも適した戦術だと考えたのだろう。それは2019RWCまでは成功した。ちなみに「4ポッド」とはグラウンドを4つに分け、FWDを「1-3-3-1」の人数で配置し、各ポッドはそのユニットで攻撃する戦術だ。左右のポッドではBACKSの選手2人とバックローがユニットをつくる。そしてハーフ団やFBなど3人がゲームをコントロールするものだ。攻撃でモメンタムを出すためにオフロードも多用したりもするが、それでもモメンタムが出ない場合は、SHからのボックスキックやSOのハイパントで相手と競り合い、アンストラクチャーに持ち込み、マイボールにできれば相手の防御が整わないタイミングで攻撃する。そしてラックで連続攻撃している際も、機を見てグラバーキックやキックパスを使って敵の背後にトライゲッターを走らせる。このキック戦術は豊富な運動量と瞬発力、それらを80分間保ち続ける持久力が求められる。2019RWCのスコットランド戦ではズバリこの戦術が的中した。ポッド、オフロード、グラバーキック、ハイパントキャッチ。その全てがトライに結びつき日本代表が勝利した。

ただその時の戦術のキーマンだったSO田村 優、CTBティモシー・ラファエレ、WTB福岡 堅樹さんらは今はいない。彼らに替わるような選手が実際にはいるはずだが代表メンバーに選んでいない。特に最近はそのほとんどが有効な攻撃に繋がらなかったにも関わらず、SHからのハイパント作戦を執拗に繰り返した。有効ではなかった理由は明白だ。的確な位置に蹴れる選手と、ハイボールに強い選手と、ハイボールのこぼれ球を上手く味方ボールにサポート出来る選手を選んでいないのだから。

また以前は、ハイボールに強くカウンターを仕掛けてくる相手には、キックではなくパスをメインの攻撃に変更するなど、対戦相手によって戦術を柔軟に変えていたような印象があるが、ここ最近はハイパントでアンストラクチャーを狙う戦術一辺倒だった。単にジェイミーHCが過去の栄光に縋り付きたかったのか、真意の程は不明だが、結局W杯本番でもこの作戦は最後まで効果的ではなかった。

自分の信じる戦術を貫くのであれば、その戦術に適した選手を選び起用する。自分のお気に入りの選手を選ぶのだったら、その選手達に相応しい戦術を考え創出し実践する。結局、そのどちらも中途半端に終わった印象だ。


5. 技術的課題

◆ ラインアウト

長年に渡って課題として挙げられているが、いつまで経っても安定しない。敵陣ゴール前のラインアウトでノットストレートや相手のスチールを何回観させられてきたことか。これはスロワー個人の問題ではなく、チームとしての強化ポイントであることは明白であろう。長年指摘されていたLOの人材育成を疎かにしてきたことも、その要因の1つかもしれない。

◆ ラインアウトモールディフェンス

今年は相手のラインアウトモールでズルズル後退するシーンが多かった印象だ。個々のフィジカルは勿論、技術的な部分もあるのだろうが、今後の改善点であることは間違いないと思う。

◆ ハイボール処理

これも以前から問題視されている部分。外国選手に比べて身長が低くフィジカルで劣っている日本には不利だが、それをスキルでカバーしている選手はリーグワンでもしばしば見かける。仮にボールを直接キャッチできなくてもこぼれ球を確保することがポイントで、ハイボールを競り合う選手を周りの選手がサポートするスキルも重要になってくる。ハイボールが相手ボールになりカウンターで攻められた場合、FWDの体力はより一層削られてしまう。

◆ BACKSのタックル

象徴的だったのがW杯のアルゼンチン戦。アルゼンチンの5本のトライ全てがBACKSに奪われた。ちなみにこの試合の日本代表先発メンバーのタックルミスはFWDが8回、BACKSが16回だった。FWDを軸にしたダブルタックルが決まっているうちは問題ないが、FWDが追いつけない外側でBACKS同士が1対1になった場合は、どうしてもパワーで見劣りする。そもそもディフェンスの上手くないBACKSを起用していること自体に問題はあるが、以前はタックルの強かった選手達も加齢による衰えを感じた。個人的に福岡さんのディフェンスが素晴らし過ぎた印象もあるが、課題として浮き彫りになったと思う。

◆ オフロードパス

最近の日本代表にオフロードの印象があまりない。W杯でも個人スタッツの1つとして取り上げられるくらいの重要なスキルである。オフロードが上手ければ、例えタックルされても攻撃を継続できる。ちなみにW杯のオフロード数上位30人に日本代表は1人もランクインしていない。ランクインしていないチームは全20チーム中わずか5チームだった。

◆ 個人のレベルアップ

今回のW杯の日本メンバーは追加招集も含め34人全員が国内組だった。海外チーム所属選手は0人。サンウルブズがスーパーラグビーから除外された21年以降で、海外リーグに挑戦したのはスーパーラグビーのハイランダーズへ移籍した姫野 和樹と、TOP14のクレルモンに移籍した松島 幸太朗のわずか2人だけだ。ちなみにアルゼンチンは、代表選手33人のうち31人は欧州をはじめとした強豪チームでプレーすることで、個人としてのスキルや経験値を上げている。今季はテビタ・タタフがTOP14のボルドーでプレーしているが、それ以外の選手の話は聞かない。個人的には齋藤直人あたりは是非海外に挑戦し、高いプレッシャーのもとでのフィジカル / 判断力 / 経験値などを磨いて欲しい。ジェイミーHCは今後、強化担当責任者としてスーパーラグビーのハイランダーズに復帰するという。毎年1人でも2人でもいいので成長株の若手選手をハイランダーズに獲得してもらい、スーパーラグビーを経験させて欲しい。


6. 仕組み

海外での個人のレベルアップが難しい現在は、やはりリーグワンでの試合がレベルアップの中心となると思う。現在のリーグワンで気になっているのが、チーム間の実力格差だ。Div.1の上位チームと下位チームの戦いは観る前に結果が分かってしまう。リーグワンの魅力そのものを損ねているのも勿論、そういう試合は選手達のレベルアップに繋がっていない気がする。もっと日本人選手のチーム間の移籍の流動性を高めることで、より色んな選手の出場機会を増やし、リーグワンの底上げにつなげて欲しい。もう1つ気になっているのが、有名外国人選手の獲得が多すぎること。そのチームの興行面を考えれば人気選手を沢山獲得したい気持ちは分かるが、例えばリーグワンで認められている外国人選手枠の3人を、またトップリーグ時代の2人に戻すとか、ポジションによって外国人選手の出場を規制するなど、リーグワン独自のルールを作り、日本人選手の出場機会を増やすことを考えても良いかもしれない。リーグワン自体のレベルは上がるが、日本人選手の育成機会はどんどん減少している。

また途中でも触れたが、個人的には正規の日本代表とは別のナショナルデベロップメントスコッド(NDS)を常設して欲しい。NDSに海外での試合を経験させることで、間違いなく今より厚い選手層を作ることが可能になると思う。

今年の6~7月に南アフリカで開催されたワールドラグビー U20チャンピオンシップ。日本代表は12チーム中の最下位に沈み、来期は下部大会の「ワールドラグビー U20トロフィー」に降格することが決まった。海外の選手達と最も差がつくのが大学4年間であるというのは通説だ。今回のW杯でも若い選手の活躍が目立った。オールブラックスのSHキャム・ロイガードは22歳、フランスのWTBルイ・ピエル=ビアレは20歳、イングランドのWTBヘンリー・アランデルも20歳、アルゼンチンのWTBマテオ・カレーラスは23歳、ワラビーズのWTBマーク・ナワンガニタワシも23歳。彼らは既に国内や海外リーグのチームに所属し、そこでの活躍が認められ代表に呼ばれている。日本でもディアンズや福井など早くからトップチームに所属している選手が活躍している。今更ここで大学ラグビーの功罪について語る気は無いが、若くて有望な才能を早い時期からリーグワンや日本代表に引き上げる仕組みを、日本ラグビー協会が真剣に考えなければいけない時期が来ていることは間違いないと思う。


7. ジェイミーHCの遺産

日本ラグビー史上最低の首脳陣だった2019RWC以降の4年間、ジェイミーHCが年棒の1億円に見合う結果を残したかは、甚だ疑問だが、ジェイミーHCの唯一の功績は、言うまでもなく2019RWCでのベスト8進出だ。今年5月、そのベスト8入りと大会そのものを成功させた組織運営力などが評価され、日本ラグビーは「ハイパフォーマンスユニオン」の枠組みに入ることが決定された。全てがこのハイパフォーマンスユニオンの恩恵かは不明だが、来年はイングランド戦やオールブラックス戦との対戦、新しいパシフィックネーションズカップの参戦など既に7~8試合が決まっている。そして2026年にはシックスネーションズとラグビーチャンピオンシップの10か国に加えフィジーと日本が参戦する新しい国際大会が予定されていると聞く。

2027年のW杯に向けて、強豪国との対戦が増える。日本ラグビー協会にはこの追い風に乗って、有望な若手の発掘育成や選手層の厚さを増す取り組みを実施して欲しい。ジェイミーHCが常に求めてきた「プレッシャーの中で一貫性を持ってプレーできるか」を試すのに絶好の機会だ。ジェイミーHCの残した唯一の遺産を生かすも殺すも、日本ラグビー協会の断固たる覚悟次第だ。



Lennyの#ラグビー豆知識

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