235 最も不運な選手 - ラクラン・ボーシェー


1. プロフィール


ラクラン・ボーシェー
(以前の日本語表記は「ラクラン・ボシャー」)

ニュージーランド出身の27歳
身長:191cm(一部サイトでは194cm)、体重:104kg
ポジション:オープンサイドフランカー

ニュープリマス・ボーイズ高校※1 卒業後、タラナキ、チーフスを経て、2021年パナソニックに加入しました。

※1:ニュープリマス・ボーイズ高校は「ガリー・フィールド」という有名なグラウンドがあるラグビー強豪校で、三菱重工のヘイデン・ベッドウェル-カーティスとはチームメイトでした。

2016年のデビュー以来、チーフスでのスーパーラグビーキャップは60に到達しました。2020年には「北島 vs 南島」※2 のメンバー候補にも入りました。

※2:「北島 vs 南島」はニュージーランドを二つに分けた、まさにニュージーランドラグビーのオールスター戦で、2020年に8年振りに開催されました。しかしその実態は単なるお祭り行事ではなく、オールブラックスの選考を兼ねたトライアルマッチです。結局、ボーシェーは北島の23人には選ばれませんでしたが、逆に現地ではそのことが話題になりました。





また2020年は、チーフスのレギュラーシーズン5試合にほぼフル出場(388分/400分)して3トライを挙げ、アオテアロア8試合にもほぼフル出場(531分/560分)して4トライを挙げる大活躍で、チーフスのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも選出されました。




2. ブレイクダウン


頑健なフィジカルと高いワークレートを誇るボーシェーですが、その最大の特徴は柔軟な身体を活かしたブレイクダウンです。
ジョージ・スミスが180cm、デビッド・ポーコックが183cm、マイケル・フーパーが182cmとジャッカルの名手(オーストラリアばっかり!)は比較的小さい人が多いのですが、ボーシェーは191cmあるにも関わらず瞬時に身体を折り曲げて覆いかぶさります。
海外では「Turnover Master」とか「Turnover Specialist」と称されています。


▼ All Blacks の公式にアップされているボーシェーの動画 ▼

Lachlan Boshier:Turnover Master

Lachlan Boshier:Turnover Specialist

Next Generation: Lachlan Boshier



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3. パナソニックとの契約の経緯


2021年6月28日にニュージーランドのStuffに ボーシェーの記事 が掲載されました。下記がその和訳の一部です。



彼は2020年のスーパーラグビーで素晴らしいパフォーマンスを発揮したにも関わらず代表首脳陣の構想に入れず、オールブラックス選出の夢が遠のいてしまいました。

当時の契約が2021年までだったため、海外からのオファーは相次いで届きました。チーフスで抜群の活躍をしてもなお遠かったオールブラックスに対して、ボーシェー自身、昨年以上の活躍でアピールしても、選ばれるのは難しいだろうと考えていました。

海外からのオファーが届き始めた頃、マネージャーを通じてオールブラックスの首脳陣と連絡を取り、海外移籍を視野に入れている旨を伝えました。

すると、オールブラックス監督のイアン・フォスターから「構想に入っていない」と回答を貰いました。これを受けて、長年の目標だった伝統のシルバーファーンではなく、新たなチームと契約をする決断に至りました。

「オールブラックスは子供の頃からの夢でした。ですが、人は全ての夢を叶えることはできません。最後は自分にとって正しい選択が必要です。私自身全力で夢に挑戦したと思っていますし、この決断に満足しています。」

「ニュージーランドでもう2年プレイできたかもしれませんが。咋シーズンは良いプレーができていたので、結果的には良い方向に働きました。複数のチームから魅力的なオファーも提示していただき、移籍するのには良いタイミングでした。」

オールブラックスがラグビーワールドカップ2019の準決勝でイングランドに敗れたことで、イアン・フォスター監督はバックローの選手にフィジカルを求めるようになりました。ボーシェーはその事で大きく影響を受けてしまった選手の1人でしょう。
彼はブレイクダウンの達人であり、リンクプレーヤーとしても質の高いプレーを発揮できますが、ボールキャリーやディフェンスでのパワーが不足した事が、選考にはマイナスに働きました。

オールブラックスの首脳陣からのフィードバックは、落選となってしまった北島対南島の試合以後届いていません。

「決して残念だとは思っていません。首脳陣のチームの作り方が選考に少しばかり反映されたのかもしれません。誰しもパーフェクトな選手はいませんから、私も課題のボールキャリーに取り組み、フィジカルも高めようとしていました。ただ、自分自身のパフォーマンスには満足しています。代表選考での立ち位置も落ちて来ていました。ですから、もうニュージーランドに留まる必要はありませんでした。ラグビーとは、チャンスが来た時に手に入れなければならないのです。」

「ウェールズやアイランド等、各国のチームから誘いがあり、その中でも日本のラグビーはテンポが速く、フィジカル要素が少ない、その上にライフスタイルも充実しているため、私とパートナーにとっては理想的な環境でした。新たな挑戦やまだ見ぬ文化を体験する事を楽しみにしています。」

ラクラン・ボーシェーがパナソニックへの移籍を決めたのには、 ロビー・ディーンズ監督 の存在も大きかったようです。

チーフスは神戸製鋼と強いつながりを持っていますが、ボーシェーにとっては5月の決勝戦でボーデン・バレット率いるサントリーを破ったパナソニックが最良のチームでした。

様々な選択肢の中、彼が決断した最大の理由はロビー・ディーンズ監督です。

「ロビー監督とは何度も連絡を取る中で、私のプレーについてかなり深く理解してくれていました。ロビー監督のチームに加入して、彼のコーチングを受けられることをとても楽しみにしています。」

ボーシェーにとってはこれが新たな旅の始まりであり、将来は5年の滞在期間を経て、日本代表になる可能性もあります。もしくは心身ともにリフレッシュをして、次のワールドカップに向けてオールブラックスを目指すかもしれません。

「今はあまり先のことは考えていません。目の前の数年を見据えています。ですが、何事にも絶対は無いように、将来はニュージーランドに戻ってプレーしたり、日本でプレイを続けたり、もしくは他の国でプレーする事もあるかもしれません。」




4. 最後に


今回のパナソニックとの契約を受け、ニュージーランドのファンの多くは「才能の流出」と嘆いているようです。それぐらいの功績を残しているのにも関わらず、最後までオールブラックスに呼ばれなかったのはまさに「ニュージーランドで最も不運なラグビー選手」です。

オールブラックスの首脳陣からはボールキャリーが不足しているとの評価でしたが、ボーシェーはスーパーラグビー60キャップで18トライを挙げているので、個人的には決してその点が不足しているとは思えませんが。。。

ただ、結果的にボーシェーのプレーを日本で観れるのですから、今はオールブラックスの首脳陣の判断に感謝しています。多分、日本でもすごく人気が出る選手になると思います。めっちゃイケメンですしね(笑)。

あとインタビューも読んで感じたのは、パナソニックのロビー・ディーンズ監督の偉大さです。色んな海外有名選手がロビー・ディーンズ監督に指導を受けたいと言っていますね。ボーシェーとは2年契約ですし、ボーシェー自身も先のことは分からないとは言っていますが、ロビー・ディーンズ監督の下、益々プレーに磨きをかけると共に、日本ラグビーや日本の文化を気に入ってもらって、是非2027年のワールドカップの日本代表に入って欲しいですね。



Lennyの#ラグビー豆知識

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