074 釜石鵜住居復興スタジアム


2021年8月26日

釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム。

東北地方の岩手県、三陸海岸沿に位置する。

周囲の自然や風景に溶け込むように柔らかく存在する姿が認められ、イギリスのラグビー専門紙『The Rugby Paper』による「世界のラグビースタジアム トップ20」に選ばれている。

総工費は常設座席数6000席で21億5500万円 ⇒ 既存の建設方法の約半分の値段。

スタジアムは仮設のスタンドで座席を増やすことができ、2019RWCの時には1万6000席まで増席していた。もしこの規模のスタジアムを造るとすれば、単純計算で約100億円の費用が必要になるが、それと比べれば5分の1程度になる。

中央のメインスタンド座席は一部取り外しが可能で、その場所を一段高いステージにすることで音楽ライブや盆踊りなどが開催できる。普通なら動かすことをまず想定しないメインスタンドすら「多様性」と「日常性」を考えて可動式にするなど、今までの常識を大きく覆す。

RWCの会場にもなったことで、熱戦とともに釜石や震災についての情報が国内外に多く発信され、今日でも震災の記憶と防災の重要性を伝えるハブとしての役割も果たす。

観客席の基礎部分はコンクリートや鉄筋でなく、周辺整備の掘削などで出た残土を再利用し、土の台の上にスタンドが乗る「土盛りスタンド」を実現した。常設座席についても、設計を工夫することで躯体(建築構造の骨組み)を極力減らし、初期建築費を抑えている。

旧国立競技場や東京ドーム、熊本のスタジアムで使われていた600席の座席を譲り受け、「絆シート」としてメインスタンド最前列に設置した。他にも、2017年5月に釜石市で起きた山林火災により被害を受けた木を再利用して、約5000席の木製シート席を作った。再利用を進めて環境に配慮しながら、コストも抑えている。

新型コロナの影響で県外への移動が制限される中、岩手県内の修学旅行や防災学習のコースにもなっている。スタンド見学やグラウンドでのラグビー体験は大好評を博している。先日はグラウンドで釜石市と宮古市が協力して実現した公開結婚式が初めて行われた。

スタジアムは大都市のエンターテインメント型施設だけではない。これからの地方の実情と身の丈に合った新たな方向性が明示されたことは、大都市圏以外の多くの地方自治体やプロスポーツクラブにとって大きなヒントになるはず。「地域に愛されるスタジアム」釜石は、日本のスタジアムのあり方に一石を投じている。




Lennyの#ラグビー豆知識

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