「FWの日本」から「15人で攻める日本」へ - サクラフィフティーン


2026年10月06日

サクラフィフティーンの北川俊澄HC体制が始まって4試合。結果は4連敗。そして、ここには見過ごせない数字があります。この4試合でサクラフィフティーンが挙げた12トライは、すべてFWによるものです。

土曜日、世界ランキング5位のアイルランドに 19 - 43 で敗れたこと自体は、ランキング11位のサクラフィフティーンにとって決して不自然な結果ではありません。むしろFWは健闘しています。セットプレー、モール、近場の連続攻撃では一定の強さを示しました。開始5分のFL向來桜子のトライで先制した後も、24分までは 7 - 7 と食らいついていました。ただ25分のシンビンから流れを失い、42分までに 7 - 29 と離されました。それでもFL浅利那未、途中から入ったPR永田虹歩のトライで 19 - 29 まで追い上げました。しかし、その先がありませんでした。

問題は「負けたこと」ではなく、「どのように負けたのか」だと思います。

現在のサクラフィフティーンは、結果的にFWで仕留めるという攻撃に偏っています。これはFWの強さの証明である一方、BKが攻撃の中で十分な役割を果たせていないことも意味するとも思います。

ここで重要なのは、BKがトライを獲ったかどうかだけではありません。BKにボールが渡ったとき、相手守備を後退させられているか。ラインにギャップを作れているか。次の選手が前へ出られる状況を作れているか。つまり、BKが相手守備に脅威を与え、攻撃の主導権を握れているかです。勿論、それはゼロではありません。イタリア戦でのWTB西村蒼空やFB西舞衣子のラインブレイク。先週のアイルランド戦の1本目のHO永岡萌のトライの起点になる、WTB西村蒼空のブレイクからのCTB片岡詩への見事な繋ぎ。土曜のアイルランド戦でのWTB角川穂乃花の重心の低い、力強いラインブレイク等々。局面では目を見張るような走りも沢山あります。

ただ総じて考えると、そこに物足りなさは否めません。

FWが前へ出た後、BKへ展開しても横方向へのパスが増えれば、攻撃の勢いは失われます。ボールを速く動かすことと、攻撃が速いことは違います。必要なのは、ボールを受けたBKが自ら前へ出て相手守備を崩し、その結果として次のスペースを生み出すことだと思います。

その意味で、10番を中心としたBKの設計は極めて重要になると思います。10番がラン、パス、キックを使い分け、12番、13番が突破やラインブレイクを仕掛け、WTBやFBがそこへ連動する。FWが相手を中央に集めたなら、BKが外のスペースを利用する。逆にBKが外を脅かせば、FWにもスペースが生まれる。この循環があって初めて「15人で攻めるラグビー」になると思います。

ところが現在のサクラフィフティーンは、この循環がそれほど十分に成立していない印象です。

ただし、これはBKの選手個々だけを責める問題ではありません。むしろ問われているのは、BKの能力を引き出す攻撃構造が、チームとして用意されているのかということだと思います。

北川HCは就任時、「これまで培ってきたセットプレーやエリアマネジメントを土台に、より展開力のあるラグビーを目指す」と方向性を示しています。それだけに、4試合で12トライすべてがFWという現状は重いです。

FWは向來桜子や浅利那未の両FLを筆頭に、一定数ゲインは出来ています。フィジー戦、イタリア戦、アイルランド第1戦と、続けて課題だったラインアウトも修正されつつあります。モールは、強豪国相手でもすでに武器になりつつあります。だからこそ、その武器をBKの脅威につなげなければならないと思います。FWで相手を中央に集め、BKが外を突く。BKが外を脅かせば、今度はFWの近場が空く。この相互作用こそが、次の段階へ進むために必要なものだと思います。

10月24日、31日のウェールズ2連戦は、その試金石になると思います。世界ランキング12位(順位は逆転されてるかも)のウェールズを相手に、しかも2試合とも日本開催。4連敗後のサクラフィフティーンにとって、ここは単なる「勝敗」以上の意味を持つと思います。

BKには、まず「外へ回す」のではなく「BKで前進する」ことを期待したいです。CTBには自らラインブレイクを狙う積極性を、10番には攻撃の方向とテンポを決める司令塔としての役割を求めたいです。WTBやFBも、外でボールを待つだけではなく、内側から攻撃に参加し、相手DFを動かしてほしいです。

メンバー変更も検討していいかもしれません。セブンズで忙しいのか、コンディション不良かは分かりませんが、大塚朱紗、松田凜日、松村美咲、小林花奈子、畑田桜子らの実績のある選手の登用も必要かもしれません。ンドカ ジェニファがNo.8として目途が立ってきたので、香川メレ優愛ハヴィリを元のWTBに戻しても良いかもしれません。ただ大幅な入れ替え自体が目的ではなく、10番、12番、13番の組み合わせを含め、異なるタイプを組み合わせて攻撃の選択肢を増やすためです。思い切って、先の全国選手権で良い走りを見せていた、横河武蔵野アルテミ・スターズのWTB小川愛夢などの若手を試すことも、2029年W杯を見据えれば意味があるかもしれません。

そして何より、BKが主体となってトライを取りに行くセットプレーが欲しいです。FWが何度も前進した最後にBKへ渡すのではなく、「この局面はBKで仕留める」という明確な攻撃です。もちろん、トライ数だけでBKの機能性を判断するのは乱暴です。それでも、4試合で12トライすべてFWという数字は、偶然として片づけるにはあまりにも明確です。

4連敗は、まだ取り返せます。しかし、「FWの日本」のままでは、その先にある世界の上位国は見えてきません。

ウェールズ2連戦で見たいのは、単なる連勝ではありません。「サクラフィフティーンのBKが変わった」と感じられることです。FWが頑張ってトライを取るサクラフィフティーンから、FWが相手を引きつけ、BKが空いたスペースを突き、BKが脅威を与えることで再びFWが生きるサクラフィフティーンへ。北川ジャパンに求められているのは、BKの選手を替えることそのものではありません。BKが機能する仕組みを作ること。そして、FWとBKが互いの強みを引き出しながら、15人全員で攻撃できるチームへ変わることだと思います。

ウェールズ2連戦まで、あと3週間あります。
いや、あと3週間しかないのかもしれません。