JAPAN XVを真剣に考える
2026年9月26日
日本代表の一つ下に位置する「JAPAN XV」というチームがあります。しかし、現在のJAPAN XVには、いささか奇妙なところがあります。何のためのチームなのか。その位置づけが、どうにも明確ではないのです。
日本代表候補の選手、リーグワンで頭角を現した若手、大学生、日本代表経験者らが集められ、時に海外チームと対戦します。2026年も香港チャイナ選抜(日本選抜として対戦)やマオリ・オールブラックスとの試合が組まれました。協会は育成と勝利の双方を目的として掲げています。しかし年間を通じて継続的に活動する「第二代表」というほどの存在感はありません。言ってしまえば、代表活動の隙間に組成される選抜チームに近いのです。
ここに、日本ラグビーの強化を考えるうえでの大きな可能性と、同時に見過ごされている問題があります。JAPAN XVを、そろそろ「イベント」から「制度」に変えてはどうでしょうか。
1. 「第二代表」という立場を明確にする
まず必要なのは、JAPAN XVの役割を明確に定義することです。日本代表をAチーム、JAPAN XVをBチームとします。ただし、単なる二軍ではありません。日本代表に招集されながら出場機会の少ない選手。リーグワンで結果を出し始めた若手。代表候補には名前を連ねるものの、まだ国際経験が不足している選手。負傷から復帰した選手。さらには、ポジション転向などを試みる選手。そうした「日本代表になり得る選手」を常時管理する、もう一つの代表チームです。
現在の日本代表に必要なのは、ベスト15だけではありません。W杯のような長期大会を戦うには、30人、40人、50人という単位で代表候補を抱え、誰かが欠けても一定のレベルを維持できる厚みが不可欠です。JAPAN XVは、そのための装置になり得ます。
2. 年間10試合を「本当に」戦わせる
制度化するなら、年に1、2試合ではお話になりません。年間10試合程度、国際試合を組みます。相手は海外の第二代表、代表候補、地域選抜、強豪国のA代表予備軍などでいいでしょう。ホームだけでなく、可能なら海外遠征も組みます。
重要なのは勝敗だけではありません。リーグワンでいくら経験を積んでも、国際試合特有のプレッシャー、異なるレフェリング、アウェー環境、相手のフィジカル、試合のテンポを経験しなければ、本当の意味で国際舞台に対応できる選手にはなりにくいのです。
だからこそ、協会が国際試合そのものを「育成環境」として用意する必要があります。若手に国際経験が足りないというなら、経験できる場所を作ればいい。代表候補が足りないというなら、候補を実戦で育てればいいのです。
3. 日本代表と同じラグビーをする
もっとも重要なのはここです。JAPAN XVを日本代表とは別の「選抜チーム」にしてしまってはいけません。基本的なゲームモデル、アタック、ディフェンス、キック、エリアマネジメント、ブレイクダウンなど、日本代表が目指すラグビーを共有します。スタッフも密接に連携させます。
そうすれば、JAPAN XVでプレーしていた選手が日本代表に昇格した際、「代表のラグビーを覚える」ことから始めなくていいのです。すでに同じ言語、同じ原則、同じ判断基準の中でプレーしているからです。そして日本代表で出場機会を失った選手はJAPAN XVへ戻り、そこで80分間プレーします。
代表からJAPAN XVへ、JAPAN XVから代表へ。
この循環を作ります。これこそが「第二代表」の意味です。
4. 代表選考を「実戦型」に変える
JAPAN XVには、もう一つ重要な役割があります。
代表候補を、国際試合の中で見極めることです。
リーグワンで素晴らしいプレーをしている選手が、そのまま国際レベルでも機能するとは限りません。ならばJAPAN XVで試せばいいのです。SOとして何試合か経験させる。FBで使ってみる。CTBとWTBを兼任させる。あるいはFWの選手をBKで試す。
最近の日本代表でも、ポジションの固定概念を越えた選手起用が見られます。しかし、こうした「可能性を探る実験」をいきなりA代表の国際試合で行うにはリスクがあります。だからJAPAN XVなのです。代表の実験場であり、同時に代表候補の試験場です。
「リーグワンで活躍したから呼ぶ」ではなく、「国際試合で日本代表のゲームモデルを遂行できることを確認してから昇格させる」。
この発想に変えるだけでも、代表選考の精度は変わってくるはずです。
5. 若手だけのチームにはしない
ここも重要です。JAPAN XVをU23の延長線上に置いてはいけません。むしろ、日本代表経験者と若手を混ぜるべきです。経験豊富な選手が数人いて、その周囲に代表経験の浅い選手やリーグワンの若手を配置します。
ベテランは単にプレーするだけではありません。国際試合の準備、試合中の判断、相手への対応、80分間のマネジメントを若手に伝えることができます。2026年のJAPAN XVにも未キャップ選手と代表経験者が混在しています。そうした構成を、むしろ制度として発展させればいいのです。
若手を育てるチームではなく、若手が代表レベルの選手になるための環境を作ります。
6. 「代表強化」を15人の問題にしない
日本代表が強くなるためには、現在のベスト15を鍛えるだけでは足りません。必要なのは、常にその背後に「次の15人」がいる状態です。さらに、その次に10人、20人が控えている状態です。
誰かが負傷したとき、誰かが海外移籍したとき、誰かがコンディションを落としたとき、「代わりがいない」という状況を作らない。そのためには、代表とクラブの間に、継続的な国際実戦の場が必要になります。
協会は競技力強化を中期戦略の重要な柱に掲げています。ならば、その「強化」を代表15人だけの問題として捉えるのではなく、代表候補層そのものをどう厚くするかまで踏み込んでほしいのです。
JAPAN XVは、すでに存在しています。新しいチームをゼロから作る必要はありません。必要なのは、役割を決めること。年間の活動計画を作ること。スタッフを置くこと。そして、国際試合を継続的に与えることです。
日本代表を強くするというのは、15人を強くすることではありません。
「日本代表になり得る選手が、常に30人、40人、50人いる」状態を作ることです。
JAPAN XVを年に一度か二度現れる「もう一つの日本代表」のままにしておくのか。それとも、日本代表強化の中核を担う「第二代表」として本格的に制度化するのか。
日本ラグビーが本当に上を目指すのであれば、そろそろこの問いに正面から答える時期に来ているのではないでしょうか。JAPAN XVは、代表の余白ではありません。日本代表の未来そのものを、どこまで厚くできるか。その試金石です。
もしこれを協会の上層部に伝えられたとしたら、何と答えてくれるでしょうか?
「そうは言っても、お金はかかるし、人もかかるし、手間もかかるよねぇ。っていうか、我々は今、2035年のW杯招致で頭がいっぱいだから、それどころじゃないんだよ」
