本田 圭佑解説 - 何故、日本代表のBKアタックがなかなか機能しないのか?


2026年9月7日

実況:さあ、日本代表。今年はここまで齋藤直人、伊藤龍之介、ディラン・ライリー、松永拓朗という中軸を全試合で継続して起用していますが、どうもBKアタックが爆発しませんね。

本田:爆発してないですね。

実況:はい。

本田:というか、爆発する前に毎回、導火線が湿ってます(笑)。

実況:ああ……なかなか厳しい表現ですが。

本田:いや、だって6試合やってるわけですよ。齋藤さんがいて、伊藤さんがいて、ライリーさんがいて、松永さんがいる。これだけ能力のある選手を6試合ずっと使っていて、「まだ連係を深めている途中です」って、いつまで途中なんですか(笑)。

実況:確かに、そろそろ形が見えてきてもいい頃ですが。

本田:そうなんですよ。本来なら、

齋藤さんがテンポを作る。
伊藤さんが方向を決める。
ライリーさんがディフェンスを壊す。
松永さんがスペースを仕留める。

こういう一本のストーリーがあるはずなんです。でも今は、

齋藤さん「はい、速く出しました」
伊藤さん「はい、展開しました」
ライリーさん「はい、ぶつかりました」
松永さん「……僕、いつ入ればいいですか?」

みたいになってる(笑)。


実況:それぞれ仕事はしているんですが……。

本田:そう!そこなんですよ。全員、サボってはいない。でも、全員が別々に頑張ってる。これ、一番ダメなパターンなんですよ(笑)。

実況:その原因の一つが、「超速ラグビー」でしょうか。

本田:僕はそう思います。超速、超速って言うんですけどね。速ければいいなら、新幹線がラグビーやったら世界一ですよ(笑)。

実況:それはそうですが(笑)。

本田:速いことは目的じゃないんですよ。相手が準備できていないところを攻めるために速くする。これが本来の意味です。でも今の日本代表は、とにかく速い。

ラック!シュッ!
ラック!シュッ!
ラック!シュッ!


実況:テンポよく出していますね。

本田:いや、テンポよく相手に守備の準備をさせてるだけの時があるんですよ(笑)。

実況:なるほど……。

本田:相手も賢いですから。

「はい、日本、また速く来ます」
「じゃあ横に並びます」
「はい、どうぞ」

ってなる。そこで外に振っても、もう相手は全員いますよ(笑)。


実況:BKには、やはり緩急が必要だと。

本田:必要です。ずっとアクセル踏んでたら、そりゃ曲がれない。でも日本代表、アクセル壊れてるんじゃないかってくらい踏み続ける(笑)。

速くする。
一回溜める。
FWで引きつける。
相手を寄せる。
そこで初めて外へ行く。

この「間」がないんですよ。ラグビーって、ただ急いでる人が勝つスポーツじゃないですから(笑)。


実況:そして若い伊藤龍之介選手への負担も大きい。

本田:大きすぎます。伊藤さんに、

「相手を読んでください」
「攻める場所を決めてください」
「テンポも変えてください」
「キックも選んでください」
「CTBも生かしてください」
「BK全体も動かしてください」

……いや、ちょっと待てと(笑)。


実況:かなり多くを求めていますね。

本田:そう。まだ大学生ですよ。そこで「10番だから全部やれ」は、ちょっと雑なんですよ。

実況:では、どうすべきでしょう?

本田:第二の司令塔を作る。これですよ。12番でもいい。ライリーさんでもいい。松永さんでもいい。伊藤さんが全部決めなくても、攻撃が動くようにする。今は伊藤さんが迷った瞬間、BK全体が、「えっ、次どうします?」って空気になる時がある(笑)。

実況:全員が次の判断を待ってしまう。

本田:そうです。若い10番を育てたいなら、なおさら周りが助けないと。「若いから経験を積ませます」って言って、全部背負わせるのは育成じゃないですよ。それ、丸投げです(笑)。

実況:そして12番の重要性ですね。

本田:僕、今の日本代表で一番大事なの、12番だと思います。なぜか。

伊藤さんを助けられるから。
第一レシーバーにもなれる。
突破もできる。
外にも展開できる。
必要ならFWも使える。

つまり10番の横にもう一人、頭のいい人を置けるんですよ。


実況:ところが現状は……。

本田:正直、試合を見ていて、「日本代表の12番って、今日何担当ですか?」ってなる時があります(笑)。

実況:それは厳しいですね。

本田:いや、役割が見えないんですよ。10番、12番、13番が一本の攻撃ラインになっていない。だからボールを何回動かしても、相手が本当に困らない。日本は一生懸命走ってる。でも相手は、「はいはい、次そっちね」って待ってる(笑)。

実況:廣瀬選手はインタビューでその辺りを意識していたようですが……。

本田:そうですね。廣瀬さんにはかなり期待できますね。

実況:ライリー選手については、もっと自由に使うべきだと。

本田:そうですね。ライリーさんを13番に置いて、「はい、ここで突破してください」だけではもったいない。彼、もっとできますから。

防御を読める。
スペースを見つけられる。
味方も使える。

だったら、もっと攻撃の中心に置けばいい。


実況:第一レシーバーに入れるという選択肢もあります。

本田:あります。今、日本代表で相手ディフェンスを見ながら判断できる選手を、わざわざ外側に置いて待たせる必要があるのか。これ、例えるなら、めちゃくちゃ料理のうまいシェフを呼んで、「じゃあ皿洗いお願いします」って言ってるようなものですよ(笑)。

実況:ライリーさん選手が皿洗い(笑)。

本田:もちろん皿洗いも大事ですけどね(笑)。でも、その人にしかできない仕事をさせないと。

実況:そして松永選手。

本田:松永さんも後ろに置き過ぎです。今のFBって、最後尾で荷物番してるポジションじゃないですから(笑)。

実況:荷物番ではありません(笑)。

本田:その荷物もちょいちょい盗まれてますけどね(笑)。いやとにかく第二の10番になれるんですよ。

ラインに入る。
判断する。
外にスペースを作る。
伊藤さんを助ける。

でも今は、「松永くん、後ろで待ってて。何かあったら頼むね」みたいになってる(笑)。


実況:能力をもっと攻撃的に使うべきだと。

本田:そう。松永さんがいるなら、攻撃参加させないともったいない。9、10、13、15。この4人を同時に攻撃へ参加させたら、相手はかなり嫌ですよ。でも今は、4人がそれぞれ違う場所で待機してる。

実況:同じピッチにいるだけ、と。

本田:そう。これ、めちゃくちゃもったいないですよ。

実況:では、結局、日本代表BKアタックの最大の問題は?

本田:シンプルです。

「選手選考と戦術設計が噛み合ってない。」

これです。本来は、

「齋藤さんがいる」
「伊藤さんがいる」
「ライリーさんがいる」
「松永さんがいる」

じゃあ、この4人で何をしたら世界で一番嫌がられるのか。そこから考えるべきなんですよ。でも今は逆に見える。先に戦術がある。「この戦術をやります」で、選手をそこに入れる。


実況:選手に戦術を合わせるのではなく、戦術に選手を合わせている。

本田:そう。だから全員、ちょっとずつ窮屈なんですよ。

齋藤さんは速く出す人。
伊藤さんは展開する人。
ライリーさんはぶつかる人。
松永さんは後ろにいる人。

……いや、そんな職業紹介みたいなラグビーやってもダメですよ(笑)。


実況:最後に、日本代表への提言をお願いします。

本田:日本代表にBKのタレントがいないわけじゃない。むしろ、います。問題は、

「誰がボールを持つか」

ばかり考えていること。違います。

「誰が誰を生かすか」

です。ここを作らないと。選手を固定することは悪くない。でも、同じ選手を使い続けることが目的になったら終わりですよ。固定する目的は、勝ちパターンを作ることです。「この形になったら日本は強い」それを作るために固定する。

今の日本代表は、選手は固定している。でも役割が固定されていない。役割が曖昧。だから連係が深まらない。連係が深まらないから得点パターンもできない。そしてBKはまた、「よし、今回は何とか個人技で……」ってなる(笑)。


実況:最後はカナダ戦のブルア選手のように個人技頼みになってしまう。

本田:そうです。でも代表チームって、個人技で毎回何とかする場所じゃないんですよ。

「個人の能力を、チームの得点力に変える場所です。」

日本代表に今必要なのは、新しい選手をあと10人探すことじゃない。今いる選手を、

「どうやったら一番嫌な存在にできるか」

そこを真剣に考えることです。

選手はいます。
素材もあります。
あとは料理だけです。

……今のところ、その料理人が、いい食材を全部ミキサーに入れてむちゃくちゃにしてる感じですけどね(笑)。


実況:最後にかなり強烈な一言が出ました(笑)。

本田:いや、でも本当に。W杯まで時間は無限じゃないですから。そろそろ、

「選手を使ってます」から「選手を生かしてます」へ。

そこに進まないといけないと思いますね。


実況:いやあ、非常に厳しい分析でしたね。

本田:いや、でもここまで問題が見えてるなら、もうやることはシンプルなんですよ。

実況:と、言いますと?

本田:僕に任せてもらえればいいんですよ。

実況:……はい?

本田:日本代表監督です。

実況:ちょっと待ってください(笑)!

本田:今の日本代表、いい食材を集めて、全部ミキサーに入れてる感じなんですよ。だから僕なら、まずミキサーを捨てます。

実況:監督就任初日にやることがそれですか(笑)!

本田:僕、準備できてますから。

実況:何の準備ですか(笑)。

本田:ホワイトボード持ってますから。

実況:それだけ(笑)!?

本田:あとは電話を待つだけです。

実況:皆さん、電話番号は探さないでください(笑)!

本田:準備完了です。

実況:……ありがとうございました(笑)。