日本 vs カナダ


2026年9月5日

日本 57 - 12 カナダ

57-12。9トライ。テストマッチの連敗を4で止める勝利――。数字だけを見れば、日本代表にとって申し分のない数字かもしれません。案の定、事象の表面しか見ない一部のメディアには「快勝」の文字が踊っています。

しかし、この試合を手放しで喜ぶのは個人的には違うと思います。なぜなら、この80分間は、日本代表が抱える問題を解決した試合ではなく、相手との実力差によって、その欠陥が致命傷にならずに済んだ試合に見えたからです。

強いチームにとって格下との対戦は、単に勝利を得るための場ではないと思います。自分たちが目指すラグビーを貫き、その完成度を高め、より強い相手との戦いへ再現可能なものを積み上げる場だと思います。9トライという結果は残りました。しかし、その内容から、世界の強豪国と渡り合うための明確な武器が見えたとは言い難いと思います。

9トライのうち8トライがFWによるものでした。FWの得点力、とりわけラインアウトモールから確実に仕留める能力は評価できると思います。ただ個人的に最も注目していたディフェンスですが、タックル成功率はわずか83%に留まりました(一般的に85%前後が「普通」)。今日のカナダ相手ならば、90%は欲しかったところです。

そして57点という大量得点が特に覆い隠してしまったのが、BKアタックの停滞です。

WTBブルアは、大外のスペースをスピードで走り切るだけでなく、FW陣の密集に近いフィールドの真ん中に自ら走り込み、ディフェンスラインを強引に切り裂くランも良かったと思います。

対照的にWTB木田は精彩を欠きました。リーグワンであれだけ活躍出来ているのに、代表になると精彩を欠くのはなぜでしょうか。カナダの1本目のトライも木田のタックルミスからでした。2本目も、HOサトケンがバックアップで回り込んでいるのにも関わらず、大外の木田が同じ選手に突進してきて、ガラ空きの大外にパスを通されたものでした。キックオフボールの簡単なノッコンもありました。最後、ゴール前に猛スピードで突っ込んできてノッコンしました。

個々人の印象はさておき、フィールドプレーの中で、どうやって世界の強豪国のディフェンスを崩すのか。BKがボールを受け、相手の守備を動かし、スペースを作り、仕留める。その連鎖は、この試合でも十分に見えませんでした。記録には残りませんが、インターセプト未遂も2度ありました。

9トライを奪いながら、「このBKアタックなら世界でも通用する」と思わせられなかったことこそ、この大勝の陰に隠れた現実であり、心にモヤモヤが残った原因だと思います。

さらに気になったのは、試合が停滞した局面での修正力でした。

後半1分で相手のミスに付け込んでHO原田がトライを奪った後、18分まで得点を奪えませんでした。18分に奪ったトライも、再び相手のラインアウトミスをLOホッキングスが奪ってそのままトライに繋げたものです。21分にはカナダに2本目のトライを獲られました。日本が次に得点を挙げたのが、初キャップのPR稲場が飛び込んだ37分でした。

世界の強豪国との試合では、80分間を通じて自分たちの思い通りに攻め続けることなどできません。だからこそ、ブレイクダウンで苦しめば攻撃地点を変え、守備が前へ出てくれば背後を使い、流れが止まればゲームを組み立て直す必要があります。日本代表には、「うまくいかない時の次の一手」がまだまだ十分に備わっていないように見えました。

ちなみにペナルティも前半は3つでしたが、後半は8つでした。今日のレフリーは特にオフサイドに厳しかったですが、試合中にもそれを修正出来ませんでした。

57-12 というスコアは、その問題をすべて覆い隠してしまいます。ミスをしても次の攻撃機会が来る。接点で押し込まれても、相手が得点まで結びつけられない。しかし、世界の上位国との試合ではそうはいきません。ひとつのノッコンが失点となり、ひとつのターンオーバーが試合を決めます。

4連敗を止めたことには意味があります。FWのセットピースに得点力があることも確認できました。しかし、連敗を止めることと、チームが強くなることは同じではありません。

勝利は、ときに薬にななります。しかし、ときには痛みを感じなくさせる麻酔にもなります。

57 - 12。結果は圧勝でした。しかし、内容まで圧勝だったと錯覚した瞬間、日本代表の進化は止まります。この80分間は問題を解決した試合ではありません。大勝という派手なスコアの裏側から、まだ解決されていない課題を突きつけられた試合でした。