ネーションズチャンピオンシップ R2 日本 vs アイルランド


2026年7月11日

日本 20 - 36 アイルランド

主力を大量に温存したアイルランドに、日本には勝機があると思いましたが、甘かったです。

アイルランドはキャプテンも代わり、多くの若手や控え組が先発しました。それでも日本は終始主導権を握れず、力の差を見せつけられました。

アイルランドは、アタックではオフロードは極力使わず、ポッドシステムを軸に、スイベルパスを駆使しながら細かくパスを繋いできます。そしてディフェンスでは、ブレイクダウンや接点のコンタクトエリアで常に圧をかけ続けます。賞賛すべきは、メンバーが大きく代わっても、この「アイルランドのラグビー」を遂行できることです。

この試合は、「アイルランドのBチームに負けた」のではなく、「アイルランドというラグビー大国のシステムに負けた試合」だったと思います。「誰が出ても同じラグビーができる国」と「相手によって同じラグビーが出来ない国」の差だったと言えるかもしれません。

しかし、日本の敗因はそこだけではありません。

前週のイタリア戦では、日本はエリアマネジメントを重視し、無理な展開を避け、ディフェンスを土台に試合を組み立てました。あれこそ強豪国型のラグビーだと感じましたが、この試合ではその成熟したラグビーが影を潜めました。アイルランドのプレッシャーを受けると、キックでエリアを取り返すことができず、自陣でプレーする時間が長くなりました。そして少しでもボールを動かそうとすると、接点で圧力を受け、テンポを失い、結局ターンオーバーを許す。その繰り返しでした。

最大の敗因は、この接点の敗北だと思います。

アイルランドはタックル後のリロードが非常に速く、日本のボールキャリアは常に二人目、三人目のディフェンダーに囲まれました。前へ出られないためラックが遅くなり、SHは苦しい球しか供給できません。その結果、BACKSは横に流されるだけで、防御ラインを崩す場面はほとんどありませんでした。スタッツを確認したら、日本のラインブレイクは、試合開始直後のトライに繋がった、WTBメイン平のわずか1本だけでした(イタリアは7本)。

つまりイタリア戦では機能していた「速いテンポ」は、接点で勝っていたから成立していたのであり、接点で劣勢になれば一気に消えてしまう。その現実を突きつけられました。

そしてゴール前のディフェンスも堪え切れませんでした。少しずつ少しずつ食い込まれ、フィジカルで受けてるので早くラインから出ようとしてオフサイド取られる。相手はアドバンテージの余裕があるので、無理せず確実にFWDを当ててくる。この繰り返しで何本もトライを獲られました。なんとかアイルランドのセットプレーからは崩されませんでしたが、接点で勝てませんでした。



そしてイタリア戦ではさほど目立ちませんでしたが、この試合で、日本の永遠の課題である「"崩し方"がまだ確立されていないBACKS」が改めて露呈しました。勿論、CTB2人が途中退場した影響もありますが、これはそれ以前の問題だと思います。

イタリア戦もアイルランド戦も、「組織的にBACKSが仕留めたトライ」が殆どありませんでした。これは偶然ではないと思います。むしろ、日本の現在地を表していると思います。

世界の強豪国のBACKSは、

・ディフェンスを寄せる
・数的優位を作る
・最後に仕留める

という工程を踏みます。

一方、日本は「余ったから外へ」という展開がまだ多い印象です。そのため相手DFは十分整列した状態で待っており、BACKSがボールを受けた瞬間にはもうスペースがありません。だから一人抜いても次で捕まる。これが今の日本です。

そして現在の世界ラグビーでは、12番と13番は単なるパサーではありません。彼らが

・ゲインラインを切る
・二人引き付ける
・オフロードする

ことで初めて外が生きます。

しかし日本は、廣瀬もライリーも良い選手ですが、「ディフェンスを壊すセンター」というより「与えられた役割を正確にこなすセンター」というタイプです。そのため外側のWTBまで防御が流れ、簡単に止められてしまいます。

そして世界トップレベルの「パスの質」が無いことです。これは意外と見落とされます。オールブラックスやアイルランドは走りながら胸元、前方、スピードを落とさない位置へボールを出します。だから受け手は加速できます。日本は悪いパスではありませんが、少し後ろ、少し高い、少し浮く。こうした細かなズレがあります。これだけで0.2秒遅れます。世界ではその0.2秒でディフェンスが揃います。今日も何本かスローフォワードがありましたが、試合全体から見ると、流れを失ってしまった大きなプレーだったと思います。

アタックコーチが不在の影響もあるのでしょう。というか、アタックコーチが不在の代表チームって、世界中探しても日本以外にあるのでしょうか?

そして私はBACKSそのものより、FWDとBACKSが分断されていることを課題に感じています。現代ラグビーでは

・FWDがパスをする
・CTBがラックに入る
・WTBが中央へ入る

こうしたポジションレス化が当たり前です。

しかし日本はまだFWDはFWD、BACKSはBACKSという色がやや残っています。だからFWDで前進しても、その勢いをBACKSが受け継げない。逆にBACKSがテンポを作っても、FWDが連続してサポートできない。この「断絶」がある限り、組織的なBACKSトライはなかなか生まれません。

例えば今日のアイルランド。控え主体でも、誰が走るか、誰が囮になるか、誰が最後に受けるかを全員が理解しています。だから一人一人はスターではなくても、BACKS全体として何度もラインブレイクできます。

以前、どなたかの何かのリプに対して「日本が目指すべきラグビーはパナソニックではないか」と返信したことがありますが、私はこの2試合を見て、その考えにさらに近づきました。パナソニックのBACKSは、派手な個人技でトライを奪うチームではありません。FWDが確実にゲインラインを越え、ラックを安定させ、SOがエリアとテンポを操り、CTBが防御を引き付け、最後にWTBが仕留める。つまり、「BACKSだけで崩す」のではなく、「15人で崩してBACKSが仕留める」ラグビーです。

現在の日本代表は、イタリア戦でその方向性を垣間見せましたが、アイルランド戦では世界トップクラスのプレッシャーを前に、その再現性を保てませんでした。20 - 36 という結果以上に、日本のBACKSには「どう崩すか」という共通言語を、15人全員で共有することが、次のステージへ進むための課題の一つだと感じます。

ディフェンスの更なる上積み含め、問題は、W杯までに間に合うかどうかです。