ネーションズチャンピオンシップ R1 日本 vs イタリア


2026年7月4日

ネーションズチャンピオンシップ R1
日本 27 - 10 イタリア
(前半:17 - 10、後半:10 - 0)

・フロントロートリオ

欧州屈指の強さを誇るイタリアのスクラムに対してほぼ互角だった。何度かペナルティを取られたが、何度かペナルティも奪った。スーパーラグビーで苦労したせいか、HO原田の顔つきが一段と精悍さを増したように見えた。原田のタックル成功数はチーム2位だった。

・両LO

ラインアウト成功率100%。ディズアンズとホッキングスの安定感が半端なかった。何度か相手ボールもスチールした。勿論、ディフェンス面でもキャリーでも2人は大貢献した。

・6番:ガンター

まさにPOTMに相応しい大活躍だった。まずはタックル、2mある肩幅(Lenny調べ)で、何度もイタリアの突進を防いだ。65分で退くまでに、両チームTOPの19回の圧巻のタックル成功数を記録した。途中、イタリアの攻撃の要、CTBメノンツェッロを吹っ飛ばしたシーンには思わず声が出た(少しペナルティが危なかったけど)。そして後半早々のトライ、あれで流れをより日本に引き寄せた。

・7番:下川、8番:コーネルセン

目立たないが、2人の運動量は凄かった。ラックに入っても直ぐに次のプレーに参加する。今日、日本が接点でやられなかったのは、この2人を始めとするセカンドマン(ラックに入る2人目の選手)の動きが良かったからだろう。

・9番:齋藤

やはりフランスでの修行は伊達ではなかった。昨年までは、早い球出しを意識するが故、テンポばかりを重視していたような印象だ。それが今日はとても落ち着いていたように見えた。3秒以内のラックからの球出しは全体の47%と決して速い展開でなかったが、それが安定感に繋がった。ゴール前でも無理に外に展開せず、接点で負けなかった強いFWD陣にひたすらボールを預け続けた。しっかりリスクマネジメントをしながら、ゴール前でもチーム落ち着かせた結果が2つのトライに結びついた印象だ。タッチキックも良かった。特に点を獲った後の相手ボールキックオフのイグジット(自陣から脱出するタッチキック)が見事だった。4本くらい、自陣からハーフウェイ付近まで戻した。1本は相手陣10mまで蹴った。距離も精度も十分だった。そしてイタリアの後ろがFB一枚しかいないという布陣を的確に突き、エリアマネジメントを優位に進めた。さらにバックアップディフェンスや相手へのプレッシャーとディフェンス面でも存在感を示した。これもデュポンのそばに2年いた賜物だろう。72分のDGも、外したことより狙ったことを称賛したい。個人的にはPOTMクラスの働きだった。

・10番:伊藤

MABs戦ほどの存在感は無かったものの、齋藤がゲームメイクに入ったおかげか、無理なランも少なく、安定したプレーが出来ていた。逆サイドへのアタック、タッチと思わせてハイパン、スペースを見つけてのキック。齋藤とのゲームの組み立てが素晴らしかった。ティア1チームから勝利を得た試合で、80分出場し、ゲームマネジメントを遂行出来たことは、何より今後の自信になるだろう。

・12番:廣瀬

成長が著しい。顔つきもそうだが、最近プレーに自信が満ち溢れているように見える。まずはディフェンス。CTBメノンチェッロを何度止めただろうか。そして日本のインゴール内でのメノンチェッロとのマッチアップにも勝利した。良く観ると、相手がインゴールに蹴ろうとした瞬間に、廣瀬は後ろに走り始めていた。攻撃でも逆転トライに繋がるラインブレイクとFB松永への優しいrストパス。キックでもエリアを何度も取り戻した。個人的にはPOTMクラスの働きだった。中野将伍がほとんどキックのオプションを使わないだけに、廣瀬が日本のCTBとして存在感を示し始めている。

・15番:松永

PGもコンバージョンも100%成功は素晴らしかった。試合運びに安定感をもたらせてくれた。トライも流石だった。



これまでの日本の課題は明確だった。

・規律
・ディフェンス
・ゴール前での決定力の無さ
・ハイボール処理
・控え選手のモメンタムとラスト20分のゲームマネジメント

それが今日の試合では、いずれも弱点にはならなかった。

・規律

日本のペナルティは前半4つ、後半5つ。流石にゴール前ではペナルティが重なったが、いわゆる不用意なペナルティは殆ど無かった印象だ。

・ディフェンス

個人的にこの試合最大の勝因はディフェンスだ。試合を通してのタックル成功率はなんと90%だった。イタリアはサイズもパワーも日本より上。普通なら何度もラインブレイクされてもおかしくない。ところが日本は、

・ラックへの2人目の寄りの速さ
・タックル後の立ち上がり
・ダブルタックル
・外側へのスライド

すべてが非常に高い精度だった。控え選手も含め、ラック周辺で80分プレッシャーを掛け続けたことで、イタリアは終始リズムを失った。

そしてゴール前のディフェンス。これまでティア1相手だと、ゴール前まで攻め込まれると高い確率で失点していたが、今日の日本はゴール前でも集中していた。前半終了間際、怒涛のアタックを続けるイタリアに対し、ペナルティは犯したものの、最後しびれを切らしたイタリアにトライではなくPGを狙わせたのがその象徴だ。

・ゴール前での決定力の無さ

ハンドリングエラーが少なく、ハーフ団の指示の下、焦らずフェイズを重ねながら粘り強くトライを取りきってくれた。特にピック&ゴーなどFWD陣の推進力は見事だった。

・ハイボール処理

思ったよりも踏ん張った。特に14番植田がクリーンキャッチは出来なかったものの、相手ジャンパーに良いタイミングで身体を当てていた。勝つ時は勝利の女神も微笑むもので、結構日本側に転がってくれた。ただ11番石田の側は殆ど相手にクリーンキャッチされていた。

・控え選手のモメンタムとラスト20分のゲームマネジメント

これまでの日本は、後半、特にラスト20分くらい、立て続けに失点するケースが多かったが、今日は違った。控え選手たちも身体を当て続け、先発陣と遜色ないくらいの働きを見せてくれた。そして前述のとおり、ハーフ団が落ち着いてエリアを獲得してくれ、よりイタリアの焦りを誘い、イタリアの攻撃を無力化させた。



71分の時点でイタリアのハンドリングエラーは17を数えていた(日本は僅か4)。そして試合を通しての被ターンオーバー数は24を記録した。イタリアのコンディションが万全であったかは分からない。少なくともシックスネーションで輝きを放っていたイタリアは今日はいなかった。

ただ結果的に日本は完勝した。勝ち方はむしろ格上感すら感じる強さだった。イタリアのフィジカルに後半でも押されず守りに入らなかった。自らテンポを作り、自らプレッシャーをかけ、自ら試合を支配し、そして勝ち切ったのだ。文句なしの完勝だ。もしこの試合が、今後振り返ったときに「日本ラグビー新時代の始まり」と呼ばれるのであれば、その理由はスコアではなく、「日本が自分たちのラグビーで世界を打ち破った」という事実にある。

もちろん、この一勝だけで世界の強豪国と肩を並べたとは口が裂けても言えない。終盤は相手に押し込まれる時間帯もあった。今回は粘り切れたが、アイルランドやフランス相手に、80分を通じて主導権を握り続ける完成度にはまだまだ遠いだろう。

それでも色んな課題を今日はまとめて克服出来たことで、日本がこれまで積み上げてきたラグビーが、ティア1の相手にも通用することを証明した意義は計り知れない。

文中、何度も色んな選手がPOTMと書いたが、今思えば、今日試合に出た選手全員がPOTMだろう。やっぱり勝利後の選手たちの笑顔は格別だ。

ありがとう!猛烈に酒が旨いよ!!



最後に。

歴史的なネーションズチャンピオンシップ初戦。エディーJAPANの最高の試合にエディーさんがいないという事実。

「超速」にこだわらず「オーソドックスなラグビー」で勝利を掴み取ったという真実。

なんという痛烈な皮肉だろうか。




【おまけ】もしも本田圭佑が解説だったら...


【キックオフ前】

「まぁ、イタリアはフィジカルも強いし、ティア1のプライドもありますよ。でもね、僕から言わせれば『だから何?』って話なんです。名前や体のデカさでラグビーするわけじゃない。メディアは『世界のパワーに対抗できるか』とか心配してますけど、僕の基準からしたら、初戦でイタリアのフィジカルとやれるなんて最高のリスクであり、最高のチャンスですからね。新戦力の伊藤さんら若手をいきなり先発に抜擢するのも、僕なら『ケチャップドバドバ出す準備しとけよ』って背中叩きますね」

【先制トライを奪われて】

「……あぁ、まぁまぁ、これはしゃあない。焦る必要はまったくないです。」

【松永のトライで逆転した場面】

「よし、ナイス!ナイス!いや、今のトライ、めちゃくちゃ綺麗でしたね。でもこれ、褒めるべきはボールをグラウンディングした松永さんだけじゃないですよ。その前の、イタリアの強烈なタックルを浴びながらも、泥臭くラックで体を張り続けたフォワード陣のブレイクダウン。これ、一般の人には見えてないでしょ?こういうね、痛みを伴う『個の犠牲』があるから、バックスに良い球が回って、美しいトライが生まれるんです。『あ、これ日本いけるな』って、このブレイクダウンの攻防を見て確信しました」

【後半:イタリアの猛攻を激しいタックルで凌ぐ場面】

「あぁー、今自陣の22メートルライン内まで攻め込まれてますね。実況さんね、今『日本絶体絶命のピンチですね』って言いましたけど、僕はそうは思わない。これね、あえてイタリアにフェーズを重ねさせてるんですよ。攻めさせて、焦らせて、一瞬の隙を見てジャッカルを狙う。今の日本のディフェンスラインのノミネート、めちゃくちゃ知的ですよ。イタリアは日本の鋭いロータックルにイライラして、ノックオンとかのミスが増えてるでしょ? 完全に日本の術中にハマってます。僕がピッチにいたら、今ごろスクラム組む前にイタリアのPRの選手に『もっと低く来いよ』ってニヤニヤしながらメンタル揺さぶってますね」

【ノーサイド】

実況「さあ、日本が27対10で勝利しました!」

本田
「いやぁ、まずね……日本ってこんな勝ち方できるんやって思いましたね。日本って昔は、"俺たちらしいラグビー"っていう言葉が一人歩きしてたじゃないですか。でも今日見たら違いましたね。勝つラグビーやってました。これ、サッカーでも一緒なんですよ。"自分たちのサッカー"って言い出したら危ないんですよ。勝つチームって、相手見て変えるんです。今日はイタリアが相手なんやから、イタリアに付き合わない。めっちゃ大事。あとね、日本、焦らへん。これ最高ですね。昔やったら、ゴール前行ったら『回せ回せ!』ってなってましたやん。今日は違う。FWDで削る。また削る。まだ削る。これ、イタリアからしたら一番嫌なんですよ。」

実況「今日はディフェンスも良かったですね」

本田
「1にディフェンス、2にディフェンス、3にディフェンスです」

実況「4は何ですか?」

本田
「ディフェンスです。いや、ディフェンスというより"我慢力"ですね。日本って昔、いいプレーした後に5分で崩れること多かったんですよ。今日は全然ない。これ、強いチームなんですよ。あとペナルティ。これ減ったでしょ。僕サッカーでも言うんですけど、強いチームって才能じゃないんですよ。ミスが少ない。結局そこなんです。あとね。今日、一番感動したのはスター選手がおらんかったこと。いやいや、悪い意味じゃないですよ(笑)。全員がスターになろうとしてない。自分の仕事しかしない。これ勝つチームなんですよ。ベンチも良かったですね。出てきた選手が普通に試合の強度を維持してた。これ、日本代表では昔あんまりなかった。今は80分で戦える。」

実況「最後に一言、お願いします」

本田
「僕ね。今日の日本見て思いました。"超速"とか、もう言わんでいいです。世界の勝ち方を、日本ができるようになった。それが一番デカい。これは2027年W杯に向けても、めちゃくちゃデカい一歩ですよ。ただ! 選手たちには言いたいです。『おい、まだ初戦やぞ』と(笑)。後半27分にPGで確実に3点を突き放したのは大人のラグビーでしたけど、最後に4トライ以上のボーナスポイントを取り切れなかったのは、僕に言わせればまだまだ甘い。ここで満足してたら、次のアイルランド戦やフランス戦でボコボコにされますからね。僕なら、ロッカールームに戻った瞬間に『はい、イタリア戦は終わり。次いくぞ』って言います。…え? 僕ですか? 僕は今から冷たい水風呂に入って、次のアイルランドのラインアウトの分析に入ります。まぁ、僕がタックルするわけじゃないんですけどね(笑)。あと賛否あると思うけど言わせてもらいます。W杯の後、次の監督が見当たらなかったら、僕を1年試してみてください」